徴用工判決は、低迷する韓国経済に致命傷となるのか。企業や投資家にとって法律より感情が優先する国と関わるリスクは大きく、ヒト、モノ、カネの韓国離れは避けられない。ただでさえ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の失政や米中貿易戦争で内憂外患だが、通貨交換(スワップ)協定など日本の援助もほぼ不可能だ。取り返しのつかないところまで来てしまった。

今回の韓国最高裁の判決は、新日鉄住金に損害賠償の支払いを命じたが、元徴用工による訴訟はこれだけではない。三菱重工業を相手取った上告審の審理が行われているほか、不二越や日立造船が2審、横浜ゴムや住石ホールディングスなどが1審と、70社超が訴えられている。

さらに韓国政府は日本企業273社を「戦犯企業」と名指ししており、今後もさまざまな名目で日本企業に賠償を求める動きが出てくるのは確実だ。

東京商工リサーチによると、韓国には日本企業393社が進出。計715拠点があり、製造業は253拠点を占めるが、日本企業にとって韓国との関わりは重大な経営リスクとなってきた。

第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏は、判決の影響について、「訴訟がドミノ倒し式に広がっていくのかどうかが問題だ。資産の差し押さえという話も浮上しており、韓国に生産拠点を置いている日本企業も事業を縮小したり、新規投資を手控えたりする動きが出てくる可能性もある」と指摘する。

人材面では、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が、日本にある企業(外資系を含む)の96%が韓国人の採用を希望しているとの調査結果を発表したばかりだ。韓国の若者に罪はないが、韓国の判決によってこうしたヒトの流れも阻害されかねない。

資金流出に対して脆弱な韓国では、ことあるごとに日本との通貨スワップ再開論を一方的に言い立てている。

ロイターによると、韓国銀行(中央銀行)の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は9月22日、日本との通貨スワップ協定を「再締結しない経済的理由は見当たらない」との認識を示したが、日本の韓国に対する不信感が高まるなかで、実現はほぼ不可能だ。

日本の協力など不要なほど韓国経済に余裕があるのならいいのだが、7〜9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前期比0・6%増と低調が続いている。韓銀は年間成長率見通しとして年初に3・0%を掲げていたのが7月に2・9%、10月に2・7%に下方修正したが、この達成も危うくなってきた。

経済協力開発機構(OECD)が公表している韓国の景気先行指数(CLI)は昨年4月から17カ月連続で下落した。直近の数値は99・2。OECD平均は99・6で、日本は99・7だった。

個別企業では、サムスン電子こそ好調だが、自動車大手の現代(ヒュンダイ)自動車の7〜9月期の営業利益が前年同期比76%減だった。米国と中国での苦戦が響いてる。

消費など内需も頼りにならず、韓国経済の現状も先行きも厳しい。これは文政権が大きな要因だ。

前出の西濱氏は「最低賃金の引き上げなど文政権の経済政策の失敗で、支持層だった若年層の雇用が増えなくなっている。米中貿易摩擦の影響が今後、顕在化してくることもあって、企業は身構えてしまっている」と分析する。

こうしたなか、今後の日韓関係について、「日本が国際司法裁判所に訴えても韓国側が裁判権の発動に同意するとは限らず、持久戦になるだろう。経済政策で失敗した文大統領としては南北問題しか手がないので、北朝鮮問題への影響も気がかりだ」と西濱氏は話す。

多国間の経済連携にも影を落とす。米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は12月30日に発効する。米中貿易戦争が激化し、保護主義的な動きが強まるなか、TPPは「自由貿易の砦(とりで)」として存在感を増している。

米中貿易戦争の影響をまともに受ける韓国も、TPP参加に意欲を見せているが、果たして文政権が、日本を含む参加国の信用を得られるのだろうか。

2018.11.2
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