自衛隊施設を望む土地を買い占め 中国の奄美大島乗っ取り計画
11/3(土) 7:00配信 NEWS ポストセブン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181103-00000004-pseven-soci
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奄美で行われた自衛隊の離島奪還訓練(共同通信社)

 紺碧の海に囲まれ、手つかずの大自然が残る奄美大島。古来、日本防衛の要衝として知られ、日露戦争時には東郷平八郎元帥がここで日本海軍の演習指揮を執った。現在は南西地域の防衛強化のため自衛隊基地の建設が進められている。将来にわたり国防の要であるはずのこの島に、不穏な動きがある。産経新聞編集委員の宮本雅史氏のレポート。

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 ここ数年、奄美大島で目的不明の土地取引が活発化している。舞台は、本島東部の沿岸部にある高台だ。2016年9月、この高台の一角にある町有地6937平方メートルが、香港資本の総合商社会長で、香港在住の日本人A氏に払い下げられた。A氏の妻は「アジアの海運王」と称される香港経済界の重鎮の次女で、中華圏に幅広い人脈を持つことで知られる。

 A氏の会社は、高級外車の販売や貿易、保険業などをこなす一方で、海図や海事情報を扱うインテリジェンス系の業務も手がけるとされる。

 A氏は高台周辺の土地も買い進め、2004年3月に5393平方メートル、2014年3月に3765平方メートル、同年7月に3204平方メートルの計1万2362平方メートルを個人の名義で購入した。町には「美術館を作りたい」と説明したというが、本当の狙いは不明だ。A氏は私の取材申し込みをやんわりと拒否した。

 不気味なのはA氏の動向だけではない。2017年9月、奄美市内のB社がこの地区の土地3か所計1万1471平方メートルを購入、その日のうちに都内のC社に転売した。地元業者らによると、B社は米国系の企業というが、実態はわからない。

 地元住民によれば、この地区は土地売買が盛んで、ブローカーによる土地転がしが疑われるケースも多く、実際に誰が購入したのかわからない事例が目立つ。

 なぜA氏らの土地売買が気になるのか。それは、沿岸部の高台から「ある島」が丸見えになるからだ。

 地元住民はこう語る。

「天気がいいと、この地区からは喜界島が近すぎるくらいよく見えます。時には米軍のオスプレイが海岸沿いを飛ぶのも見えます」

 奄美大島の東方約25kmにある喜界島は、周辺を隆起サンゴ礁に囲まれた台地状の島だ。先の戦争では、奄美で最初に飛行場が建設された軍事拠点であり、現在は全方位から電波を受信できる高感度アンテナを備えた「喜界島通信所」が建つ。防衛省情報本部は通信網の確立整備を進めている最中にあり、喜界島通信所では中国や北朝鮮、ロシアなどの通信を傍受するとされる。

 わが国の安全保障にかかわる島を「監視」できる高台を、中国との関係が疑われる外国資本らに買い占められつつあるのだ。

◆容易に工作員が潜り込める

 奄美群島は九州の南から台湾に連なる「琉球弧」の外縁をなし、沖縄や対馬とともに日本列島の防衛ラインを形成する。点在する旧日本軍の戦跡は、この島がいかに重要拠点だったかを示す。

 奄美大島では現在、陸上自衛隊の駐屯地建設が急ピッチで進む。

 防衛省は南西地域の防衛体制強化のため、島北東部の奄美市名瀬大熊に陸自の「奄美駐屯地(仮称)」、島南西部の瀬戸内町節子に同じく「瀬戸内分屯地(仮称)」を建設している。総額550億円を投じて大熊に中距離地対空ミサイル部隊など約350人、節子に地対艦ミサイル部隊など約210人を配置し、来年3月に部隊配備となる予定だ。

 気がかりなのは、陸自の拡張と外国資本らによる土地買収のタイミングが一致することだ。別の地元住民はこんな不安を口にする。

「奄美が水面下で大熊や節子に自衛隊を誘致し始めた頃から、ちょうど外国資本による不動産買収が始まった。中国側が自衛隊の動向にあわせて、拠点づくりをしているのではないかと勘繰ってしまう」

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