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海上自衛隊の「ヘリ空母」として運用されている護衛艦「いずも」 Kim Kyung-Hoon-REUTERS


<日本の海上自衛隊が、これまで専守防衛の観点からあえて持たなかった空母を持つ日が近づいている>

日本政府は、海軍力の増強に励む中国を警戒し、第二次大戦後初めて自前の「空母」をもとうとしている。

12月に策定される「防衛計画の大綱」には、日本の自衛隊が少なくとも空母1隻を所有する計画が盛り込まれる。

戦後の日本国憲法は、日本が再び侵略戦争を繰り返すことがないよう、「専守防衛」を基本方針としている。

そのため、攻撃型の兵器とされる空母の所有はこれまで検討されなかった。自国から遠く離れた場所まで出向いて攻撃を展開することもできるのが空母だからだ。

ステルス戦闘機も追加で100機

日本政府は、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦(ヘリ空母)で全長248メートルの「いずも」型護衛艦2隻のうち1隻を改修して、ジェット戦闘機が発着できる空母として使用することを検討している。

岩屋毅防衛相は27日の記者会見で、いずも型護衛艦について「せっかくある装備なので、できるだけ多用途に使っていくことが望ましい」と語った。

空母計画とほぼ同時に、日本は米ロッキード・マーティンの最新鋭ステルス戦闘機「F35」100機を新たに88億ドルで購入する方針と報じられたばかり。この100機には、空母で運用可能なタイプも含まれている。

9月の日米首脳会談で安倍は、トランプ米大統領に対して「(日本の)厳しい安全保障環境に対応するため、今後とも米国装備品を含め高性能な装備品を導入することがわが国の防衛力強化にとって重要だ」と語っている。

今年8月にまとめられた日本の2018年版防衛白書では、中国が空母建設に乗り出したことを懸念事項としてあげている。中国の国営メディア、新華社通信が11月に報じたことによると、中国はすでに3隻目の空母(国産としては2隻目)を建造中だ。

中国海軍の急速な近代化は、アジア太平洋地域における中国の戦略目標の遂行上、重要な役割を果たす。南シナ海や東シナ海での領有権確保に加え、台湾の主権問題も関わってくる。

日本も中国とは東シナ海の尖閣諸島をめぐる領土問題を抱えている。中国政府は尖閣諸島を「釣魚群島」と呼んで領有権を主張している。

尖閣諸島の防衛が目的

日本の海上自衛隊が所有を検討している空母は、尖閣諸島など日本の南西諸島の島々の防衛にあたることが目的とみられる。

中国政府は、領有権を主張するため中国のものではない南シナ海の海域に人工島を造成し、さらにそこにミサイルを配備するなど強引な力の誇示を行ってきた。

アメリカとの間の緊張も高まっている。米海軍と空軍は、人工島の周辺海域も大部分が公海であることを中国側に示すため、定期的に「航行の自由」作戦を行って中国側を牽制している。

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Newsweek 2018年11月30日(金)14時52分