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半島がまた、きな臭くなってきた  崩壊した米朝シンガポール合意
2018年12月21日(金)
https://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20130423/247115/

(中略)

夜間給油訓練の標的は北
――米国はなぜ今、北朝鮮を「人権」で攻撃し始めたのですか。
鈴置:北朝鮮が非核化に応じないと見切ったのです。話し合いで解決できると考えていた時は「人権」まで持ちだすと交渉が複雑になるので控えていた。
 しかしどうせ対話で解決できないのなら、北朝鮮を「許すことのできない敵」に認定したと自国民にも世界にも表明し、圧力を最大限まで強めるつもりでしょう。
 12月14日、トランプ大統領がツイッターで「米朝協議は急がない」と表明したのも、この一環と思います。
 2017年11月の韓国国会演説で、トランプ大統領は北朝鮮の人権状況がいかにひどいかを強調しました。金正恩政権を「共に天をいだけぬ敵」に認定したのです。
 当時はいつ米国が先制攻撃するか、世界がかたずを飲んで見守っていました。その段階に逆戻りしてきたわけです。
 安保専門家が注目した航空事故があります。12月6日午前2時ごろ、米海兵隊のFA18戦闘攻撃機が夜間の給油訓練中にKC130空中給油機と衝突し
 両機とも室戸岬の100キロ沖に墜落した事故です。
 AFPの「高知沖で米軍2機墜落 1人死亡 5人不明 訓練中に接触」(12月7日、日本語版)は米海兵隊の発表を受け「定期訓練中だった」と報じました。
 しかしある専門家は「夜間の給油訓練は最も危険な訓練。相当な必要性があって実施していたに違いない」と首を傾げました。
 「定期訓練」ではなく「特定の目的があっての訓練」と言うのです。
 墜落した海兵隊のFA18は山口県・岩国基地の所属です。第2次朝鮮戦争が勃発すれば深夜、北朝鮮を真っ先に空爆する部隊と見なされています。
 そしてこの専門家は「空中給油が必要な攻撃目標は北朝鮮以外にない」と断言します。

裏切り者との演習は不要
――北朝鮮を攻撃する訓練をしているということですね。
鈴置:専門家の多くがそう見ています。6月の米朝首脳会談以降、メディアは「融和ムード」を醸し出してきました。
 でも、あの会談では肝心なことは何も決まっていないのです(「から騒ぎに終わった米朝首脳会談」参照)。
 北朝鮮はそもそも、核を放棄するつもりなどない(『米韓同盟消滅』第1章第1節)。
 米国も、ポッテンジャー上級部長が語ったようにそれは初めから分かっている。いつでも戦争モードに戻るでしょうし、戻り始めたと見る専門家が増えている。
――しかし、米国は韓国との合同空軍演習を中止しました。
鈴置:年末に実施する「Vigilant Ace」ですね。ただ、今や「韓国と合同演習をしない」方がきな臭いのです。
 「Vigilant Aceは対北先制攻撃の訓練です。文在寅大統領は「米国が先制攻撃する際は北に通報する」と公言しています(『米韓同盟消滅』第1章第1節)。
 米国にすれば「Vigilant Ace」を実施して裏切り者の韓国に手の内を見せるわけにはいかない。
 そもそも敵と内通する韓国と肩を並べて実戦を戦うことがなくなった以上、合同訓練も不要なのです。

(後略)