【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領は12月31日、アジア諸国との安全保障や経済面の包括的な協力強化を盛り込んだ「アジア再保証推進法」に署名し、同法が成立した。台湾への防衛装備品の売却推進やインド太平洋地域での定期的な航行の自由作戦を盛り込み、中国をけん制した。これに対し、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は1月2日の演説で米国を念頭に台湾問題への介入に強く反発した。

新法は3月1日に期限を迎える米中貿易協議も見据え、政権と議会が一体となり、中国に圧力をかける狙いもある。中国の軍事、経済両面の台頭に対する危機感を米議員は広く共有している。

新法のもとで、米軍は中国が軍事拠点化を進める南シナ海などで航行や飛行の自由を維持する作戦を定期的に実施する。アジアの軍事・経済支援に今後5年間で15億ドル(約1650億円)を充て、東南アジア諸国の海洋警備や軍事訓練などに重点配分する。

国・地域別では台湾との協力を深める。「中国の脅威がさらに高まりかねない」として防衛装備品の定期的な売却を進める。米政府高官の台湾訪問の推進も盛り込んだ。

米国が台湾との関係強化を打ち出したことを受け、中国側では習氏が2日の演説で「外部の干渉や台湾独立勢力に対して武力行使を放棄することはしない」と強硬姿勢を示した。中国外務省の陸慷報道局長は新法に対して「(中国大陸と台湾が一つの中国に属するという)『一つの中国』政策に違反し、中国の内政に干渉しており、強烈な不満と断固たる反対を表明する」と批判した。

米国のアジア再保証推進法では、インドについても「防衛装備品の売却や技術協力を最も親しい同盟国と同じ水準に引き上げる」と強調した。

同法は東南アジア諸国連合(ASEAN)が中国と共同で策定する南シナ海での紛争回避に向けた「行動規範」を通じ、ASEANによる海洋権益の維持を支援するとも明記。ASEANの後ろ盾となる姿勢を鮮明にして、中国主導の行動規範づくりにクギを刺した。

ルールに基づく経済秩序を目指す「インド太平洋戦略」の推進も盛り込んだ。人権尊重や国際的な法規範を重視する考えを示した。

知的財産保護については、中国の産業スパイやサイバー攻撃を念頭に「罰則を含む法律執行の強化が最優先事項だ」と指摘した。米政府は180日以内にインド太平洋地域での中国による知的財産の窃取の現状や摘発状況を議会に報告する。サイバー分野でもアジア諸国と連携を深めていく。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3960442003012019MM8000/
日本経済新聞 2019/1/3 0:28

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米議会は新法成立を通じて、対中政策で安易な妥協をしないようトランプ氏にクギを刺した(18年12月、ワシントン)=AP