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「神風アリラン」の一場面//ハンギョレ新聞社

演劇「神風のアリラン」の土台になった『私は朝鮮人神風だ』(2012年・西海文集)を出版したキル・ユンヒョン記者が、同演劇をレビューした。

 「桜って、怖いものさ」

 漆黒の闇が去った舞台に母娘が立っている。朝鮮人女性のキム・ユジャ(イ・ハンナ)とその娘マリ(キム・チェイ)は、解放を目前にした1945年春、日本の陸軍航空基地があった鹿児島県知蘭のあたりで「豆腐キムチ」「チジミ」「どんぐりのムク」「マッコリ」など朝鮮料理を売る小さな食堂を営んでいる。彼らは在日朝鮮人作家の梁石日(ヤン・ソギル)の小説『血と骨』に登場するような怪物のような朝鮮人男性のパク・ソンウン(ピョン・ジュヒョン)のふるう暴力にさらされている。

 母娘は昔の伝説を回想するように、美しい桜に魂を奪われ、妖怪になってしまった人々の話を交わす。彼らが言う妖怪とは、天皇のために自殺特攻隊になり、空しく死んでいく日本軍人であることは推測に難くない。そしてその妖怪の中には、朝鮮人でありながら日本のために自殺攻撃を強行して死んだ10人余りの朝鮮人神風隊員たちがいた。

 劇団「劇発伝所301」が9日、ソウル大学路(テハンノ)芸術劇場の小劇場で初演した演劇『神風アリラン』は、妖怪となってしまった朝鮮人特攻隊員の内面を見つめる作品だ。彼らは劇パンフレットで「解放後70年が経った今、暗鬱な時代に力のない地に生まれ、不幸な最期で生涯を閉じた朝鮮人青年たちの訴えに耳を傾けてみよう」と伝える。

 このために『神風アリラン』は、死を控えた朝鮮人特攻隊員たちが最後に自分の本音を明かすことができた仮想の空間である「朝鮮人食堂」を演劇的背景装置にする。この朝鮮人食堂を通じ、日本本土、京城、満州、沖縄、知蘭などそれぞれの場所で各自短いエピソードを残して死んだ実在の人物であるタク・キョンヒョン(キム・ギョンナム)、チェ・ジョングン(イム・イルギュ)、キム・サンピル(ハン・イルギュ)ら朝鮮人特攻隊員らを呼び出す。隊員たちはここで朝鮮酒マッコリを飲みながら「ここでは思いっきり息ができる気分です」「ここまでなくなったらずいぶん寂しくなります」と主人に本音を打ち明ける。

 実際、朝鮮人特攻隊員の内面はどうだったのだろうか。演劇に出てくる人物や場面ではないが、彼らの内面は矛盾と悲哀に満ちていた。同胞たちに「それぞれが特攻隊になってこの歴史を守ってください」とぞっとする言葉を残して死んだ特攻隊員のパク・ドンフンは、父親と最後の挨拶で「弟たちは絶対に軍に送るな」と泣きながら頼み、「天皇の盾」である日本陸士56期生のチェ・ジョングンは親しかった同期の岡林龍之に苦悩に満ちた顔で「僕は天皇陛下のために死ぬことはできない」と言った。

 しかし、彼らは現実でも演劇でも、ついに自分の運命に立ち向かうことはできない。「なぜ、あの妖怪みたいな日本に飼いならされたように逃げられないの」とすすり泣くマリに、タク・キョンヒョンも、チェ・ジョングンも、キム・サンピルも、はっきりとした答えを出せない。タク・キョンヒョンは物悲しいアリランを歌うだけで、チェ・ジョングンは「私たち一人ひとりが生きていたことを覚えていてほしい」と頼み、キム・サンピルは朝鮮が日本のために最善を尽くせば「自治権を得られる」という論理を突きつける。

 「桜の世界」の反対側にあるのは、弱い光で闇を照らす小さな「蛍の世界」だ。特攻隊員らは「われわれ朝鮮人も蛍の光となり、また朝鮮の地に帰るだろう」と言いながら、戻れない道へと発つ。
>>2-5あたりに続く

キル・ユンヒョン記者
http://www.hani.co.kr/arti/culture/music/881767.html
韓国語原文入力:2019-02-1219:54 訳M.C

ソース:ハンギョレ新聞<[レビュー]朝鮮人神風特攻隊…蛍の光を夢み、桜の妖怪になった人びと>
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