国民は、唖然としたのではないか。2月23日、岩屋毅防衛相が、東南アジア諸国連合(ASEAN)の拡大国防相会議(ADMMプラス)の事務レベル会合に合わせ、4月29日から韓国・釜山沖で行われる海上共同訓練に「海上自衛隊が参加する」と表明したのだ。

前日の22日、韓国国防省は、「日本の海上自衛隊は参加しない」とすでに発表しており、それを否定する形で、日本が「参加表明」したのである。

驚くべきは、その先だ。報道によれば、岩屋氏は記者団に対して「釜山への入港は見送るが、あとのプログラムはすべて参加する。適宜適切に判断しつつ日韓の防衛協力も進めていきたい」と語ったのである。

咄嗟に私は、ある都々逸(どどいつ)の一節を思い出した。「踏まれても 蹴られても ついていきます 下駄の雪」である。

日本は、ことここに至っても、「ああ、そんなに参加したいのか。よしよし」と韓国に頭を撫でてもらって「参加させてもらう」方針を選択したのだ。ああ、またかと、呆れたのは私だけではないだろう。

「“真の日韓関係”は、これでまた遠ざかる」――私の思いをひと言で表現するなら、それだ。済州島で開かれた国際観艦式で、韓国が海上自衛隊の護衛艦に対して旭日旗(自衛艦旗)を掲げないよう求めたため、護衛艦の派遣を中止したのは、昨年10月だ。しかし、韓国は一向に反省もせず、逆に12月にはレーダー照射事件を引き起こした。

そんな姿勢の韓国に、今度は日本が「参加させてください」とすり寄ったのである。レーダー照射事件では、自衛隊員が「命の危機」に晒され、その後、反省するどころか韓国は開き直って「威嚇飛行に対して謝罪しろ」などと理不尽な要求を続けている。

いくら今回の海上共同訓練が重要だったとしても、逆に参加することで生じるマイナスを考えたら、もはや、防衛省に「まともな思考」を期待することが無駄であることがわかる。

日本と韓国は、激動する東アジア情勢からも、“真の同盟国”でなければならない。だが、「踏まれても 蹴られても ついていきます 下駄の雪」というやり方では、それが逆に「遠ざかってしまう」ことが、なぜわからないのだろうか。

当欄で何度も書いているとおり、歴史上、中国の代々の王朝を宗主国として、その属国として生きてきた朝鮮半島の人々には、強いものにはひれ伏し、弱いものには居丈高になる「事大主義」が染みついている。

そのため、韓国は“強い国”であるアメリカや中国に対しては、「節度」と「敬意」をもって接している。しかし、日本に対しては、「節度」と「敬意」を払わず、「何をやってもいい」と舐め切っている。事大主義の国なので、常に“弱腰”で“情けない”日本には当然の姿勢だろう。

その国に対して、今回の参加表明は「絶対にしてはならないこと」なのである。仮にアメリカから「日本も参加して欲しい」という要請があったとしても、きちんと不参加の理由を説明して理解してもらわなければならないのではないか。

私は、「日王(注=日本の「天皇」)は慰安婦の手をとって心から謝罪しろ」という先のムン・ヒサン国会議長の言葉も、「日本に対しては何をやってもいい」と舐め切った「事大主義」に起因するものだと思っている。

旭日旗問題、そしてレーダー照射事件以来、私は、軍の留学生交換停止、同じ階級による交流・会談の停止、Gソミア(日韓軍事情報包括保護協定)の自動更新の停止……等々に踏み切り、日本が毅然とした姿勢を示すようあらゆる機会を通じて訴えてきた。

韓国に自分たちが「日・米・韓」という自由主義陣営におり、同盟関係にあるという重要性を理解してもらうためだ。しかし、防衛省、すなわち安倍政権は違った。逆に韓国に対して誤ったメッセージを送ってしまったのだ。

今回の参加表明で、韓国はホッとしただろう。そして、日本へのこれまでのやり方が「正しかった」ことを再認識した。今後、ますますエスカレートするだろうし、それは、同時に「真の日韓関係」が遠のいたということでもある。

(門田隆将)

https://blogos.com/article/360004/
BLOGOS 2019年02月24日 12:59