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▲Bruce Klingner(ブルース・クリングナー)氏/保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の上級研究員。担当は北東アジア、軍縮、ミサイル防衛。米中央情報局(CIA)と米国防情報局(DIA)に勤めた20年間、韓国オフィスのトップや韓国部門の副部長などを歴任し、韓国分析や北朝鮮の軍事分析に関わった。ヘリテージ財団には2007年に参画。テコンドーの黒帯3段。

Q: 日韓関係が再び厳寒期に入っています。
(中略:日韓を巡る対立が以前とは異なる)

Q: 文在寅政権をどう評価しますか。
 文大統領はあらゆる観点で見て、北朝鮮の擁護者、あるいは弁護士として行動している。北朝鮮の体制を承認しているし、北朝鮮以上に平和宣言に熱心だ。文大統領が北朝鮮の主張を受け入れると、韓国は北朝鮮に対する制裁解除に向けて動くようになった。

 韓国政府の高官は平和宣言があくまでも政治的で、外交上のもので、世界に影響を与えるようなものではないと考えている。彼らは平和宣言の重要性を過小評価している。平和宣言にサインしても北朝鮮が行動を改める保証にもならなければ、核兵器や従来型兵器を用いないという保証にもならない。逆に、経済制裁の効果を弱め、国連軍の撤退や米軍縮小につながるといった恐れがある。

 先に北朝鮮にメリットを与えようとする点では、文大統領も金大中元大統領や盧武鉉元大統領と同様にお人好しだ。最終的に北朝鮮が国際法や米国法、国連決議に従うというナイーブな希望を持っている。

Q: 米韓関係をどう見ていますか。
 米韓関係や米韓同盟は良好で力強い。問題が発生しても乗り越えてきた。ただ、北朝鮮の非核化については米国と韓国に相違がある。韓国は非核化を米国と北朝鮮の2国間関係としてみる傾向があるのに対して、米国は非核化を多国間のイシューとして見ているという点だ。

 北朝鮮の非核化を米朝の2国間の問題にすると「米国の敵視政策に対応しているだけだ」という北朝鮮の理論的枠組みを認めることになる。それは、北朝鮮の譲歩を得るために米国が譲歩しなければならないという圧力につながる。その状況を避けるには、多国間の問題と捉え、国連決議に違反しているために行動を取っているという形にする必要がある。

 ブッシュ政権の時に北朝鮮の核問題で6カ国協議を主張したのも同じ理由だ。北の核の影響を受ける国々はそれぞれ異なる優先順位を持っている。米国の焦点は長距離弾道ミサイルと核兵器だが、日本は中距離ミサイルと拉致問題かもしれない。利害関係国が同じテーブルに着く6カ国協議であれば自国が懸念している問題を提起できる。今回の米朝首脳会談のように、トランプ政権のやり方はあくまでも2国間であり、米国対北朝鮮という構図になっている。これは避けなければならない。 
(中略:ハノイの会談をどう見るか)

Q: 実際に非核化はあり得ると思いますか。
 私は26年間、北朝鮮を見てきた。その間、合意の反故は8回だ。北朝鮮の非核化についてはかなり懐疑的、悲観的に見ている。

篠原 匡/ニューヨーク支局長

ソース:日経ビジネス<日韓対立、米は仲裁せず、ヘリテージ財団クリングナー氏>
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