若者を中心にTWICEやBTS、東方神起らのファンが多数いる。
紅白に選出されたら、大喜びする若者が大勢いるだろうが、事はそう簡単に運びそうにないのである。

「好きな人だけが買うCD、行きたい人だけが行くライブと、さまざまな人が見るテレビはまるで違う。
『日韓外交が最悪の時期に韓国の歌手など見たくない』という人の意見も考慮しなくてはなりません。

スポンサーが渋面になる怖れがある民放での出演は簡単ではないし、
視聴者の抗議には慎重に耳を傾けるNHKの紅白となると、出場は至難でしょう」(民放社員)

前出・芸能ジャーナリストの渡邉氏も「ファンの人は紅白出場を待ち望んでいるでしょうが、国民感情を考えると、無理ではないか」と読む。

10月中には決まる紅白出場歌手の選考基準は通常、以下の3点だ。

(1)今年の活躍(2)世論の支持(3)紅白の企画に合うかどうか――。
K-POP勢にとって、(1)は難なくクリアできるだろうが、目下の情勢では(2)が障害になってしまいそうなのだ。

K-POPを支持する自由は完全に認められなくてはならないが、テレビの場合、支持しない自由もまた尊重しなくてはならない。
それがテレビの難しいところだ。

実は2018年にもBTSは出場が有力視されていた。同4月発売のアルバム「FACE YOURSELF」と、
同11月発売のシングル「FAKE LOVE/Airplane pt.2」がオリコンの週間ランキングで1位になっており、
人気面では当選ラインに十分達していると思われた。

ところが、原爆投下時の様子を印刷したTシャツをメンバーが着ていたことで猛批判を浴びる。
これが選考に深刻な悪影響を与えたとみられる。テレビ朝日も同11月、Tシャツ問題を理由に「ミュージックステーション」の出演を見送った。

「そもそも韓国人歌手勢の紅白出場は外交問題や世論と関わり続けてきました」(前出・芸能ジャーナリストの渡邉氏)

事実、チョー・ヨンピル(69)が韓国人歌手として紅白に初出場し、「窓の外の女」を歌ったのは、
ソウル五輪を翌年に控え、日韓友好ムードが高まっていた1987年だった。以降、1988年にケイ・ウンスク(58)、
1989年にはキム・ヨンジャ(60)、パティ・キム(81)が初出場をはたす。

ここまでは演歌歌手だが、W杯サッカーが日韓で共催された2002年には、K-POPの嚆矢とも呼べるBoA(32)が初出場。
日韓首脳会談が行われた2004年にはRyu(45)、イ・ジョンヒョン(39)が初出場した。

2003年から2004年にはNHKで放送された韓国ドラマ「冬のソナタ」が爆発的人気に。音楽と合わせ、第1次韓流ブームと呼ばれた。

2008年には東方神起、2011年にはKARA、少女時代がそれぞれ紅白に初出場。このころを第2次韓流ブームと称されている。
当時は日韓の外交関係が悪くなく、首脳会談がたびたび開かれていた。2009年には「東アジア学生フォーラム・日韓2009」が行われるなど、市民レベルの友好ムードも高まっていた。

ところが、2012年以降は2017年にTWICEか初出場するまで、5年間にわたって韓国勢の登場がなかった。
NHKがそれを理由にすることはないが、2012年8月の李明博元大統領による竹島への上陸問題が影響しているとみられる。
さらに李氏は天皇への謝罪要求も行っており、国内の反韓感情が熱を帯びていたのだ。

李氏は2013年に大統領から退き、後任に朴槿恵前大統領が就いたが、日韓の外交問題は一進一退と言える状態だった。
そして2017年、現在の文在寅大統領が就任すると、「徴用工」訴訟など数々の問題が勃発。このままだと紅白は李政権時代と同じ道を辿りそうだ。

「そもそも紅白側がK-POP勢を選出したとしても、選ばれた側は出にくいでしょう。
韓国では『東京五輪をボイコットすべき』という声すら高まっているから、紅白に出場したら母国で『なぜ紅白に出るのか』と批判されかねない」(前出・芸能ジャーナリストの渡邉氏)

現在は第三次韓流ブームと呼ばれる。とはいえ、売れていれば出場させられるというわけにはいかない。それが国民的番組の宿命だ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/08231100/?all=1&;page=2