日本が韓国向けの輸出管理を厳しくしたのは不当だとして韓国政府がWTO=世界貿易機関への提訴の手続きに入ったことを受け、日韓の2国間協議が日本時間の11日夕方からスイスで行われます。

日本政府がことし7月から韓国向けの半導体の原材料など3品目の輸出管理を厳しくしたことについて韓国政府は先月、WTOに提訴する手続きに入りました。

WTOの規定では手続きの第1段階として、まず当事国どうしが協議することになっていて、日韓両政府はWTOの本部があるスイスのジュネーブで11日、日本時間の11日夕方から2国間協議を行います。

協議には、日本からは経済産業省の黒田淳一郎通商機構部長が、韓国からは産業通商資源省のチョン・ヘグァン(丁海官)新通商秩序協力官が出席します。

これまで日本は「適切な輸出管理を行うために国内上の運用を見直したもので、WTOのルールには違反していない」と主張しているのに対し、韓国は「政治的な動機に基づく差別的な措置でWTOのルール違反だ」と主張していて、2国間協議でも双方が同様の主張をする見通しです。

日韓の立場の隔たりは大きく協議で折り合うのは難しい情勢で、早ければ来月にもWTOの裁判所にあたる「小委員会」が設置され、審理される可能性が高くなっています。

提訴前の2国間の協議とは

WTOには日本や韓国を含む164の国と地域が加盟しています。加盟国の間で貿易をめぐる紛争が発生した場合、WTOの規定では提訴の手続きの第1段階として当事国による2国間の協議によって解決策を探ることになっています。

今回は、韓国が先月11日に日本に2国間協議を要請してWTOへの提訴の手続きに入りました。これに対し日本は先月20日、協議に応じる方針を明らかにしました。

2国間協議は、協議の要請があった日のあと30日以内に行うことになっています。そして、2国間協議の要請を受け取った日のあと60日以内に日韓両政府の折り合いがつかない場合、韓国はWTOの裁判所にあたる紛争解決機関に提訴することができます。

日本の主張「安全保障上、必要な措置」

日本政府は、ことし7月から韓国向けの半導体の原材料など3品目の輸出管理を厳しくした措置は軍事的な目的で利用されることを防ぐために必要な輸出管理の運用の見直しだとしています。

今回の措置の前には軍事転用されるおそれのある原材料でも韓国向けの輸出手続きは簡略化されていましたが、適切に管理できていない事案が見つかったことなどから運用を厳格にするもので、日本の安全保障上、必要な措置だと説明しています。

また、運用を見直したあとは3品目の輸出契約ごとに個別の審査を行い、軍事転用のおそれがないと確認できたものは輸出許可を出していることから、「禁輸措置」ではなくWTOで禁止される貿易の制限的な措置にはあたらないと主張しています。

日本政府としては、今回の2国間協議でも輸出の際に必要な手続きの運用方法や、民間利用向けの輸出を制限する意図はないことなどを改めて韓国側に説明する方針です。

韓国の主張「政治的な動機に基づく、差別的な措置」

日本政府が韓国向けの半導体の原材料など3品目の輸出管理を厳しくしたことについて韓国側は、WTO=世界貿易機関のルールに違反しているとして3点をあげています。

まず、「太平洋戦争中の『徴用』をめぐる韓国の裁判と関連した政治的な動機に基づくものだ」として、貿易規定を公正かつ合理的に運用する義務に違反していると主張しています。

また、「韓国だけをねらった差別的な措置だ」として、差別禁止の義務にも違反していると訴えています。

さらに、日本が3品目の輸出管理を厳しくしてから10日までに輸出許可が7件しか出ていないとして、輸出制限を禁止するWTOのルールにも違反していると主張しています。

その一方で韓国側は、「2国間協議を通じて日本の立場を聞き、ともに建設的な解決策を模索したい」としていて、2国間協議で事態の打開を図りたいという思惑もにじませています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191011/k10012122281000.html
NHKニュース 2019年10月11日 4時07分