新型のコロナウイルスの感染拡大による中国での致死率は、感染が最も深刻な湖北省・武漢では5%近くになっている一方、それ以外の地域を見るとおよそ0.8%にとどまっていて、専門家は、「武漢では軽症の患者がカウントされておらず致死率は見かけ上高くなっているとみられる」と話しています。

中国の保健当局、国家衛生健康委員会は新型のコロナウイルスについて4日、患者の数が2万438人となり死亡した人はあわせて425人となったと発表しました。

中国の保健当局のデータをもとに新型のコロナウイルスの致死率を見ると、中国ではおよそ2.1%ですが、感染拡大が最も深刻な湖北省・武漢ではおよそ4.9%となっています。その一方で、武漢を除いた中国でみるとおよそ0.8%にとどまっています。

これについてWHO=世界保健機関で感染症対策を指揮した経験のある東北大学の押谷仁教授は「武漢では医療機関が混乱しているため軽症の患者がカウントされていなかったり、重症患者への治療が十分行えなかったりして、致死率が高くなっている可能性がある」としています。

その上で「今後は、毎年のインフルエンザの致死率に近い0.1%程度に近づいていくのかもしれない。ただ問題は、体力の低下した80代以上を中心に犠牲者が出るインフルエンザと異なり、今回のウイルスは、ウイルス性肺炎を引き起こす。比較的若い年代でも死亡している人がいるので、どのような人に命の危険がおよぶのか詳しい分析を急ぐ必要がある」と指摘しています。

また中国の保健当局が発表しているデータについて、症状のない感染者の数は含まれていないため正確な致死率については引き続き注視する必要があるとしています。

中国当局「十分な治療受けられなかったことも要因か」

新型のコロナウイルスの感染者の致死率について、中国の保健当局、国家衛生健康委員会の焦雅輝副局長は4日の記者会見で「致死率は相対的に低いほうだ。感染した人の大多数は軽症で、必ずしもパニックになる必要はない」と強調しました。

一方で、感染が最も深刻な湖北省・武漢での致死率がおよそ4.9%と全国平均の倍以上になっていることについては、症状の重い患者を受け入れ可能な病院のベッド数が不足し、十分な治療を受けられなかった人がいたことも要因として考えられると指摘しました。その一方で、現在は医療体制の充実が図られているとして、今後は致死率を下げていくことが可能だという考えを示しました。

このほか、焦副局長は、死亡した人のうち60歳以上の人が全体の80%以上を占めるほか、心臓や脳の病気、それに糖尿病など何らかの病気を患っている人が75%以上に上るとして、高齢者や持病のある人ほど致死率が高くなる傾向があると指摘しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200204/k10012271951000.html
NHKニュース 2020年2月4日 16時09分