領土問題や慰安婦問題などで以前より対立が続いていた日韓関係ですが、2018年10月には徴用工訴訟問題、2018年11月には慰安婦財団の解散、2018年12月には韓国軍レーダー照射問題など、近年になり数々の問題が噴出し、両国の関係は現在、戦後最も冷え切ったと言われるほどに悪化しています。

2019年7月に日本が韓国に対する輸出管理を強化したことを受け、韓国では「ボイコットジャパン」と呼ばれる不買運動が巻き起こり、日系企業や訪日インバウンド市場は大きな打撃を受けています。

こうした現状に、韓国国内からも批判の声があがっています。2019年7月には韓国の歴史認識を自己批判した書籍である「反日種族主義」が出版され、こうした見方を支持する動きを証明するかのように、ベストセラーとなりました。この書籍の出版に対しては、異論を唱える人も現れ、著者を脅迫するなど過激な行動に出ています。

韓国からの旅行者は2019年10月には前年比65%減少など、関係の悪化が顕著です。関係性の悪化の影響を受けてか、東京オリンピックにからめて日本の印象悪化を狙ったかのような「日本放射能汚染地図」が公開され、今年1月には風刺画のようなポスターまで登場しています。今回は、こうした二つの動きについて整理します。

2019年9月、韓国の与党である「共に民主党」の日本経済侵略対策特別委員会は、「日本放射能汚染地図」を公開しました。

しかし、公開された地図に掲載されている数値は根拠のないものであり、日本への風評被害を容易に招く悪質なものであると多くの議論を呼んでいます。

公開された「日本放射能汚染地図」は、放射能に汚染されたエリアとして、日本地図上に福島第一原子力発電所から同心円状に広がる円を描いたものです。

この円の中には宮城スタジアム、福島あずま球場、埼玉スタジアム2002、茨城県立カシマサッカースタジアム、新国立競技場の5施設と、東京オリンピックにおける聖火ランナーの出発地が入っています。

韓国の与党「共に民主党」はこの地図をもとに、多くのオリンピック会場が放射能に汚染されていると主張しています。

共に民主党は、地図の作成には日本で土壌の汚染度などを調査している市民団体「みんなのデータサイト」が公開している数値を参考にしたと主張していますが、みんなのデータサイト側で確認をしたところ、合致する数値は見つかっていないとしています。

その後FNNの取材に対し「地図の数値はさまざまなデータを総合的に反映したもの」と主張を変えるなど、地図で示されている数値の根拠には疑問が残ります。

《中略》

1月末、TwitterではK-POPのコンテンツと合わせて「東京オリンピック中止」のメッセージが複数投稿されています。これについて、専門家の指摘といったものは現状特にないようですが、組織的にムーブメントを強めていこうとしている可能性も否定しきれません。

これらの制作物は、一見した限りでは日本における放射能汚染の現状を大衆に伝えるという目的があるように見えます。しかし実際はそうではなく、多くの人に対し日本に関する悪い印象を植え付けて、日本への風評被害をもたらすことこそが狙いという指摘も見られます。

ただし同時に、こうした制作物が注目を集める裏には、日本の被災地の現状を知りたいというニーズもあるといえるでしょう。こうした海外における日本のイメージを理解し、適切な情報発信を行うことの意味は、今後ますます増していくといえるでしょう。

《中略》

韓国でこのような根拠に乏しい情報を発信する人々の目的は、風評被害を発生させることにより日本に対する印象そのものを悪化させ、東京オリンピックにおける経済成長を阻害することであるとも言われています。

彼らは誤解を生むような情報や根拠のない情報を発信した後、メディアやインターネットにおいて間違いを指摘されても訂正せず、あえて放置することにより風評被害を招きかねない情報を既成事実化させようと目論んでいる可能性を指摘する声もあります。

このようなプロパガンダに対して、一切の反応をせず事態が鎮静化するのを待つ「戦略的無視」をすると、情報が訂正されないままインターネットなどを経由して広く出回ってしまいます。

既成事実化してしまったイメージを後からの訂正によって変えることは往々にして困難です。根拠のない噂やデマを見かけた場合、正しいデータを用意し訂正を求め、現在の情報が間違っているということが多くの人に分かるよう、声を上げていくことも重要といえるでしょう。

《以下略》

訪日ラボ編集部
https://honichi.com/news/2020/02/12/radioactivemap/

2020年02月12日