最近、日本の「歴史歪曲」批判が続いているユネスコ世界遺産「端島(軍艦島)」について、韓国政府が登録の「抹消」を進めることが報道されました。登録抹消。可能なのでしょうか? 結論から言います。「簡単ではない」と思われます。

「抹消カード」を真っ先に切ったのはパク・ヤンウ文化体育観光部長官でした。パク長官は18日、国会文化体育観光委員会所属の共に民主党議員との懇談会の業務報告で、ユネスコに対し、「登録抹消を要求する」という趣旨の発言をしたことが確認できます。

すると文体部は22日に報道釈明資料を出します。「政府は(端島に関する歴史歪曲情報を展示している)産業遺産情報センターに関し、ユネスコ世界遺産の取り消し要求は公式発表していない」とし、「外交部などと協議し、日本が約束を履行するよう多角的な対応策を講じている」と明らかにしました。

パク長官の発言から2歩ほど後退したような内容です。

文体部が一歩先に出ると、外交部も立場を表明せざるを得なくなりました。キム・インチョル報道官は23日、「前日にユネスコ事務局長宛の書簡を通じ、登録抹消の可能性の検討を含め、世界遺産委員会で日本に充実した後続措置の履行を求める決定文が採択されるよう、協力と支持を要請した」ことを明かします。

「登録抹消」についても言及していますが、強調されていることは「日本に充実した後続措置の履行を求める決定文の採択」を進めるという後ろの部分です。

専門家の間からは、同じ書簡を文体部と外交部がそれぞれ出すなど、「省庁間の勢力争い」をしているという声も聞かれます。

ユネスコが世界遺産制度を運営し始めたのは1972年です。それ以降の48年間で抹消は2例しかありません。1例目は2007年のオマーンの「アラビアオリックスの保護区」、2例目はドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」です。

両ケースとも、当該国政府は「遺産の保護」より「開発」を望んでいました。オマーン政府はこの地域で油田を開発しようとし、ドイツは渓谷に景観を損なう橋梁を建設しました。

実際、「世界遺産条約履行のための作業指針」によると、指定の取消しは「登録を決定づけた資産の特徴が失われるほど資産の状態が悪化していた場合」と「(ユネスコが要求する、遺産の物理的保護に関する)改善措置が実施されなかった場合」に限られます。

ユネスコ韓国委員会でも、今回のように「歴史歪曲」を理由として第三国政府が取り消しを要求した前例はないとしています。実際、登録を取り消すためには、世界遺産委員会の委員国の3分の2以上の賛成が必要です。

では韓国政府は、日本の破廉恥な歴史歪曲に手をこまねいていなければならないのでしょうか。そうではありません。

日本は2015年7月、明治期の日本の産業発展を示す端島などの23施設を登録する過程で、端島などの一部の産業施設で「1940年代に朝鮮半島出身者などが『自分の意思に反して(against their will) 』動員され、『強制労役(forced to work)』させられたことがあった。犠牲者を記憶にとどめるためインフォメーションセンターの設置などの措置を取る」と約束しています。

しかし、15日に一般公開が始まった産業遺産情報センターの展示内容を見ると、朝鮮半島出身者が端島などで差別的待遇を受けたことはなかったという証言が紹介されるなど、歴史的事実を歪曲していることが確認できます。

韓日は2017年、慰安婦関連の記録をユネスコ世界記録遺産(MOW)に登録する過程で大きな軋轢が生じました。日本は、2016〜2017年のユネスコ分担金(分担額は2020年現在、中国に次ぐ第2位)の「支払い留保」はもちろん「脱退」さえちらつかせ、この登録を最後まで阻止しました。

当時、この事業を推進した国際連帯委員会事務団のハン・ヘイン総括チーム長は、「米国が2017年に脱退を宣言した状況で、日本までこのような脅迫をしてきたので、ユネスコは当然、組織瓦解の可能性を懸念せざるを得なかった」と話しています。その時と同じ失敗を繰り返さぬよう、政府の合理的かつ緻密なアプローチが必要です。


2020-06-26 07:36
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/37054.html