慰安婦被害者・吉元玉(キル・ウォノク)さん(92)が2017年に国民からの寄付として受け取った1億ウォン(約890万円)が、口座に入金されてからわずか1時間4分後に全額下ろされていたことが確認された。吉元玉さんは当時、旧日本軍の慰安婦被害者を支援する韓国の市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)のソウル市麻浦区内にある施設に滞在していた。

本紙が28日に確認した吉元玉さんの通帳明細によると、吉元玉さんの口座には2017年11月22日午前10時52分、1億ウォンが入金された。 2015年の韓日慰安婦問題合意に基づく日本からの拠出金受領を拒否した被害者たちのために、国民が寄付したものだった。寄付金を集めた正義連は「100万市民と共に女性人権賞」という名目で吉元玉さん、金福童(キム・ボクトン)さん、宋神道(ソン・シンド)さんらに渡した。

吉元玉さんの口座に入金された1億ウォンは1時間4分後の午前11時56分に4回にわたって全額出金された。500万ウォン(約45万円)は現金で、5000万ウォン(約450万円)・2000万ウォン(約180万円)・2500万ウォン(約220万円)はそれぞれ小切手にして引き出された。吉元玉さんはこのころ、認知症になっていた。

正義連は今月18日、吉元玉さんの個人口座にあったお金が引き出されたという疑惑について、「吉元玉さんは受け取った寄付金1億ウォンのうち5000万ウォンを正義連に寄付し、1000万ウォン(約90万円)は養子に支給したとのことだ」と言った。このため、小切手で引き出した5000万ウォンは正義連に寄付されたものと見られる。吉元玉さんの養子であるファン牧師もこのころ、1000万ウォンを受け取ったと語った。だが、ファン牧師は「母が当時、1億ウォンもの大金を賞金として受け取った事実は全く知らなかった」と話した。残り4000万ウォン(約360万円)の使途は明らかになっていない。

吉元玉さんと一緒に1億ウォンの賞金を受け取った金福童さんも5000万ウォンを、宋神道さんは1億ウォンを財団に寄付したと正義連は言った。

吉元玉さんの口座に入ったほかのお金も1億ウォン寄付と同様の方法で出金されていた。政府やソウル市などが吉元玉さんの口座に送った支援金は、毎月16−19日に一度に350万−370万ウォン(約31万−33万円)ずつ現金で引き出されていた。正義連は「吉元玉さんは現金で持っていて、息子が尋ねてくると渡すなど、ご自分で使っていた」と言った。しかし、吉元玉さんの養子であるファン牧師側は「母は宣教費に使うようにと毎月50万−60万ウォン(約4万5000−5万3000円)渡してくれた。政府から毎月、母の支援のためにもらうお金は100万−120万ウォン(約9万−10万円)くらいだと思ってばかりいた。350万ウォンにもなるとは知らなかった」と語った。

野党・未来統合党「慰安婦ハルモニ(おばあさん)被害真相究明タスクフォース(TF)」の郭尚道(クァク・サンド)委員長は「正義連が認知症のハルモニの世話をしながら、そのハルモニの口座に入ってきたお金を自分の組織に送金した部分については、横領罪などの捜査が必要だ」と言った。

「1億ウォンが一日で口座からすべて消えた経緯」を問うと、正義連の李娜栄(イ・ナヨン)理事長はテキストメッセージで「朝鮮日報は吉元玉さんの通帳の明細をどのようにして入手したのでしょうか? 釈明願います」と回答した。その後、追加で「記事に責任はお取りになるのでしょう」というメッセージも届いた。

同じく正義連のハン・ギョンヒ事務総長は「寄付した5000万ウォンのほかに別部分、すなわちハルモニの個人資産はハルモニが管理なさっていたので、私共は知るよしもない」と言った。

2020/06/29 11:19
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