●朝日新聞の回答

「耳を疑ったのは、ある大手メディアの論説委員の方が『在日は韓国にとって祖国の裏切り者という側面がある。なぜ韓国が嫌がる展示をして刺激するのか。韓国にいる韓国人の証言しか信用できない』と発言したことです。勇気を振り絞って真実を証言してくれた元島民に大変失礼だと思います」(同・加藤センター長)

「政府に都合のよい証言だけ集めたのだろう」と言われた事もあるが、加藤センター長は「政治的意図はありません」と胸を張る。

「センターでは昭和3年に宮崎県に生まれ、小学生の時に端島に移住した男性の証言も紹介しています。インタビューを撮影した動画の中で男性は、日本政府の外交姿勢を批判しています。ある政府の関係者から『何も国の施設でこのような証言を展示しなくても』とのご批判もありましたが、これも貴重な証言ですから、私はそのままにしました。中庸だと、右からも左からも批判を受けます。今後もありのまま歴史的事実だけを追い求めていくつもりです」(同)

 朝日新聞に対し、事実関係の確認や、改めて社説の根拠を教えてほしいと取材を申し込むと、文書で回答があった。その全文をご紹介する。

《読者からのご意見ご感想や取材対象・関係者からの問い合わせ等について、本社は社外に公表することは原則として致しません。貴誌は7月9日付社説の根拠についてお尋ねされておられますが、社説に記述しました通りです。日本各地で労務にあたった朝鮮半島からの労働者につきましては、さまざまな公文書などが存在し、研究発表もなされているところです。よろしくお願い申し上げます》

●今後、朝日新聞は?

 朝日新聞は7月16日に加藤氏にも回答を行っている。デイリー新潮に対する回答にある《日本各地で労務にあたった》から《研究発表もなされているところです》の部分は、加藤氏への回答書とほぼ同じ内容のようだ。公文書や判例について具体的に質問したはずだが、出典を明示することはなかった。

 元島民の会も朝日新聞に対して抗議文を送ったという。今後、朝日新聞がどのような対応をするのか、どのような報道を行うのか、注目される。