韓国政府が来年度予算に、東京五輪の南北合同チーム推進のため数十億ウォン(数億円)台の予算を編成したことが28日に確認された。2018年の平昌冬季五輪では、南北合同チームを結成したことにより女子アイスホッケーチームの韓国代表選手たちが出場機会を失い、公正さに関して論争が巻き起こっている。それでも2021年に予定されている東京五輪で南北合同チーム結成を再び推進する動きを見せているのだ。

 野党・国民の力=旧・未来統合党=のキム・スンス議員室によると、文化体育観光部は来年度予算で「南北体育交流」名目で23億3100万ウォン(約2億1000万円)を組んでいるという。南北が昨年、女子バスケットボール・女子ホッケー・ボート・柔道の4種目について南北合同チーム「コリア」を組むことで合意したことによるものだ。具体的には「2020東京五輪など国際大会への共同進出」に関する予算は15億3200万ウォンと見られている。このうち南北合同チームを構成することにした4種目の選手たちの合同訓練費は2億3000万ウォン(約2070万円、1種目当たり5700万ウォン=約510万円)だった。文化体育観光部は「1回当たり14泊15日の日程で、南北選手団が合同訓練をする」と述べた。

 スポーツ界とその周辺では、「団体種目で南北合同チームの構成が可能な種目は女子バスケットボールくらいだ」という話が出ている。女子ホッケーは五輪予選で脱落したし、ボートは本選進出の可能性が低いからだ。柔道は個人種目の性格が強いため、「南北合同チーム」の趣旨を生かすのが困難な面がある。事実、女子バスケットボール南北合同チームを意識しているかのように、文化体育観光部は来年、「南北統一バスケットボール試合」開催を計画している。これには3億6900万ウォン(約3300万円)の予算が策定されている。

 今年2月、韓国女子バスケットボールチームは五輪最終予選で1勝2敗して組3位となり、劇的に出場を決めた。2008年の北京大会以来、12年ぶりに五輪の舞台を踏むことになったのだ。韓国女子バスケットボール代表チームのイ・ムンギュ監督は帰国時のインタビューで「予選から選手たちは本当に苦労した。これまでやってきた選手たちがいるから、南側の選手たちだけで行くべきだというのが個人的な考えだ」と語った。ところが、イ・ムンギュ監督はその後、五輪出場権を獲得した監督であるのにもかかわらず、再任を果たせなかった。このため、女子バスケットボールチームの五輪本選での指揮は別の監督がすることになった。

 このような政府の女子バスケットボール南北合同チーム推進の動きに対して、政界を中心に「海洋水産部職員が西海(黄海)で残酷にも銃殺された状況で、南北合同チームを構成するのは国民感情にそぐわない」と指摘する声が上がっている。野党も「文在寅(ムン・ジェイン)政権は『南北合同チーム』で南北間の平和ムードを盛り上げようという公算が大きい」と主張している。事実、李仁栄(イ・イニョン)統一部長官は今月初め、冨田浩司・駐韓日本大使に会った際、「2018年の平昌(冬季五輪)での平和の気運が東京五輪でも続き、その後の北京五輪を通じて平和の動きが広がっていけるよう期待する」と述べ、南北合同チームへの思いを示唆している。

 キム・スンス議員は「平昌冬季五輪時の強制的な南北合同チーム構成で、一生の夢だった五輪に出られなかった韓国のアイスホッケー選手がいた。それでも文在寅政権はやめずに、東京五輪で韓国女子バスケットボール代表選手たちのチャンスさえ奪おうとしている」と言った。その上で、「南北合同チームの構成を前に、大韓民国の国家公務員が銃殺・焼却されるという残酷な事態が起こり、遺体すら見つかっていないことを考慮すべきだ」と批判した。

朝鮮日報日本語版 9/29(火) 10:30
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