尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はアジア歴訪中のナンシー・ペロシ米国議会下院議長と会談しなかったが、これについて主要外信各社は「尹大統領はペロシ議長を冷遇(snub)した」などと相次いで報じた。

 ブルームバーグ通信は4日「ペロシ下院議長が台湾を訪問し世界の注目を集めた直後、次の訪問先でははるかに小さい『ファンファーレ』(歓迎)を受けた」とした上で、上記のように報じた。ブルームバーグ通信は「就任からわずか3カ月で支持率が大きく下落した尹大統領は『ペロシ議長と直接会談する必要はない』と考え、電話会談を選択した」と伝えた。これについて韓国大統領室の崔英範(チェ・ヨンボム)広報首席秘書官は「尹大統領は休暇のため表敬訪問を受ける日程の確保が難しいことは米国側に事前に了解を求めた。ペロシ議長もこれを十分に理解した」「全ては国益を総体的に考慮して決めたことだ」と説明した。

 ブルームバーグ通信は「尹大統領はペロシ議長のアジア歴訪で直接会談しなかった唯一の国家指導者になった」とも指摘した。ペロシ議長は韓国を除く訪問先では各国の首脳と会談した。シンガポールではリー・シェンロン首相、マレーシアではイスマイル・サブリ首相、台湾では蔡英文・総統と会談した。5日に訪問した日本でも岸田文雄首相と会談したという。

 ブルームバーグ通信は「2007年にペロシ議長が下院議長に就任してから、韓国の大統領はペロシ議長と会談してきた」「最も影響力ある米国の政治家の一人であるペロシ議長に会わないことは『自害行為』になりかねない」とも指摘した。これについて新米国安全保障センター(CNAS)のキム・ドゥヨン非常勤上級研究員は「グローバル中枢国家であり民主国家グループの重要な一員という本人の宣言を守ることができるか、自国の国益を守るために中国に対抗できるかなどについて、ワシントン(米国)は深刻な疑問を示すだろう」と批判した。

 英紙ガーディアンも「尹大統領は『中国敵対視を避けるためペロシ議長と会談しなかった』との指摘を受けている」と報じ、フィナンシャル・タイムズ(FT)も「中国との緊張が高まる中、韓国の大統領はペロシ議長を軽視した」と指摘した。

 ただし一部では「尹大統領はペロシ議長と必ずしも会談する必要はなかった」との見方もある。陳重権(チン・ジュングォン)元東洋大学教授は4日にCBSのラジオ番組「一番勝負」に出演し「我々(韓国)が(ペロシ議長を)招待したわけでもないし、米国政府からのメッセージを持ってきたわけでもない。非常に個人的で政治的な側面があるとの声もある」「ペロシ議長は清国や明国の使臣でもない。朝鮮王朝時代の情緒が今も残っている」と反論した。

 陳氏は「それでも会うべきとの世論もあったので、最終的に電話会談を行った。私の考えではこれは神の一手だ」「簡単に言えば突き放したわけでもなく、かといって会うのはどうかという状況で妙策を見いだしたわけだ」と説明した。

 延世大学政治外交学科のヤン・スンハム名誉教授もブルームバーグ通信に「尹大統領がペロシ議長と会談しなかったのは『外交的に無礼』と映るかもしれないが、韓米同盟に大きな影響はないだろう」「ペロシ議長が台湾で論争を巻き起こした時期に韓国大統領室は政治的葛藤と距離を置きたかったはずだ」との見方を示した。

オ・ギョンムク記者
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