外交部の朴振(パク・チン)長官が8~10日に中国で同国の王毅外相と会う。ペロシ米下院議長の台湾訪問で米中対立が激しくなった状況での外交部長官の訪中をめぐり「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の外交的ポジショニングと関連した主要な契機になるかもしれない」との観測が出ている。

◇米中対決激化の中で発表された訪中

外交部は5日、「朴長官が王外相の招きで中国山東省青島を訪問し韓中外相会談をする。韓中関係、韓半島(朝鮮半島)と地域、国際問題など相互関心事について協議する予定」と明らかにした。会談日は前日に大統領室高位関係者が言及した9日だ。

両国外相の対座は先月7日にインドネシアで行われた主要20カ国(G20)会議から1カ月ぶりだが、高官クラスの公式訪中は自由民主主義を掲げ「価値外交」を明らかにしてきた尹錫悦政権になって初めてだ。

特に今回の会談は微妙なタイミングに訪中形式で行われる点で注目される。

王外相は4日にカンボジアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(韓日中)外相会議で台湾問題をめぐり日本の林芳正外相と正面衝突した。その余波で1年9カ月ぶりに開かれる予定だった韓日中外相会談は白紙となった。同日日本の排他的経済水域(EEZ)には史上初めて中国の弾道ミサイル5発が落ちた。

王外相は会議期間中に米国のブリンケン国務長官とは偶然の接触すら避けた。

この渦中で尹大統領は訪韓したペロシ米下院議長と会わなかった。台湾と日本を含むペロシ議長のアジア歴訪国のうち唯一だ。大統領室は当初「ペロシ議長と尹大統領の接見は予定にない」として急に電話会談の日程を決めた。さらにペロシ議長の入国時には韓国側高官が出迎えず、冷遇論まで自ら招いた。そしてペロシ議長が日本に出発した直後に朴長官の訪中日程が発表された。

◇尹「中国が誤解しないようにせよ」

当局者の間ではペロシ議長の訪韓動線と儀典混乱などと関連し「韓中関係を考慮した戦略的判断」という話が出ている。実際に尹大統領は先月の外交部の業務報告で「中国が誤解しないよう積極的な外交をしなさい」と指示した。

このため朴長官が今回の訪中を通じて米国が主導する半導体供給網構想である「チップ4」に韓国が参加することなどが中国を排除するものではないという点を積極的に説明するだろうという見方が出ている。

亜洲(アジュ)大学のキム・フンギュ教授は「中国は尹錫悦政権が『親米反中』に転じたと判断している。政府が反中などの政治スローガンを強調した大統領選挙の時とは違い中国に柔軟な立場を見せるのは、中国に対する外交的刺激が場合によっては『THAAD報復』と比較できないほど莫大な『費用請求』につながりかねないという現実的認識のため」と話した。

実際に中国は韓国の「チップ4」参加を通じた中国に対するデカップリングに参加しないようメッセージを出していた。今回の会談ではこれとともに高高度防衛ミサイル(THAAD)システムと関連した「3不政策」(THAADを追加配備しない、米国のMDに参加しない、韓米日軍事同盟に参加しない)の維持を具体的に要求する可能性もある。

これと関連し在中韓国大使館高位関係者はこの日「前政権の関連交渉首席代表と政府報道官が『THAAD3不』は約束ではないと明らかにしている」として、ひとまずTHAAD3不は政府間の公式合意ではないという既存の立場を再確認した。

◇対北朝鮮レバレッジなど「ジレンマ」

米中間で「戦略的曖昧さ」を基にいわゆる「バランス外交」を指向した文在寅(ムン・ジェイン)政権とは違い、尹錫悦政権はこれを批判して対米外交中心の「戦略的明確性」を強化してきた。

問題は中国が非核化などと関連した北朝鮮の態度変化を牽引できる唯一の国と評価される点だ。

これと関連して慶熙(キョンヒ)大学のソ・ジョンゴン教授は「前政権のバランス外交が失敗した原因は米中の顔色をうかがって結果的に双方ともに消極的に対処したため。中国を意識してペロシ議長との接見を避けるのではなく、双方に堂々と会って韓国の立場を積極的に表明するのがむしろ外交的な実力と立地を広げる道」と指摘した。

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