台湾有事、米国の戦略国際問題研究所が徹底シミュレーション
米空母2隻撃沈も、中国ははるかに甚大な被害被る
堀田 佳男

中国は本当に台湾を軍事侵攻するつもりなのか――。

台湾問題で米中の緊張が高まるなか、米首都ワシントンにあるシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)がいま、中国が台湾に軍事侵攻した時の戦争シミュレーションを行なっている。

こうした戦争シミュレーションはこれまでも複数の研究機関で実施されてきた。

今回CSISは、2026年に中国が台湾に大規模攻撃をしかけたと仮定し、その対応を様々な角度から研究している。

ホワイトハウスからほど近いビルの5階で、同研究所の研究員だけでなく、退役将校や国防総省の元高官らが、今年9月までシミュレーションを続ける予定だ。

シミュレーションは計22回も行われることになっており、これまで18回が実施され、今年12月に結果が公開される見込みである。

すでに参加者が内容の一部を公表しており、シミュレーションの概要が見えてきている。

「(米中紛争によって)米国は多数の人的犠牲と物資を失うが、中国の侵略から台湾を守ることができることが分かった」とする肯定的な見方がある一方で、「台湾海峡を挟んだ戦争は、すべての交戦国にとって壊滅的な打撃になる」といった悲観論も出ている。

シミュレーションの参加者は西太平洋と台湾が拡大された地図をもとに、「赤チーム」の中国と「青チーム」の米国・台湾に分かれて、チェスをするように軍隊を操っているという。

CSISの上級顧問であるマーク・カンシアン氏が米メディアに述べている。

「すべての場合ではないが、ほとんどのシナリオで、米国と台湾は中国の侵略を撃退することができることを示している」

「ただその代償は台湾のインフラや経済だけでなく、太平洋に展開する米軍にとっても非常に大きいものになる」

シミュレーションによっても違うが、米中間で激しい戦闘が1カ月間続いた場合、米国は原子力空母2隻を失うだけでなく、最先端の戦闘機を数百の単位で失う可能性があるという。

この損失は米軍にとっては大打撃で、米軍の世界的な軍事力低下につながりかねない。

しかし前出のカンシアン氏の見立てによれば、中国軍が多くの米軍艦船を撃沈して米航空機を破壊しても、「同盟国による反撃は中国海軍の艦隊を打ち負かし、最終的には約150隻の中国艦船を沈没させることになる」としている。

専門家によると、150隻という数字はほとんど中国軍の敗北を意味するという。

さらに、別のシミュレーションでは次のような展開も予想されている。

まず中国軍が日本国内の米軍基地と太平洋上の空母打撃群に弾道ミサイルを発射する。

米軍のジェット戦闘機部隊が大破させられ、空母を含む米艦船が沈没する。

そして中国は台湾の東海岸に軍艦を派遣し、台湾のインフラを砲撃して地上部隊の移動を妨害する。

次に中国軍は台湾侵攻作戦を敢行し、約2万2000の兵力を台湾南東部に上陸させる。そして港湾や飛行場を占領しながら北上していく。

しかし米軍が本格参戦してからは徐々に中国側は形勢が不利になっていき、台湾の東海岸付近にいる中国艦船が破壊される。

さらに米軍によって兵員や物資の輸送をする中国艦船も攻撃され、中国側が不利な状況に追い込まれていくという。

シミュレーションではさらに、中国軍が台湾に上陸して首都台北を占領する動きに出ても、米軍は航空機とミサイル、潜水艦による攻撃によって中国軍の補給能力を断って侵略を阻止できるとしている。

中国側は楽観的なシナリオのもとでも台湾の3分の1を占領することしかできず、結局は敗北を認めざるを得なくなるという。

こうしたシミュレーションが行われるようになったのは昨年、米インド・太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官が「中国は2027年までに台湾侵攻を成功させることができるかもしれない」と警告したことが契機になっている。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71378