日本で10年間特派員を務めた英BBC放送の記者が日本を離れるにあたり、「日本は未来だった、しかし今では過去にとらわれている」と評するコラムを22日に掲載した。

 BBCのルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ記者は10年間にわたる東京特派員生活を終え、自身の経験を振り返る記事で、「現在、アメリカとヨーロッパが今日の中国の経済力の成長を恐れているように、かつては強力な日本経済の台頭を恐れていた。しかし、世界が 予想した日本は結局出現しなかった」と書いた。

 ヘイズ記者は「日本の経済は依然として世界第3位の規模であり、殺人事件の発生率は低く、政治的対立は少ない『平和な国』だ」としながらも、非効率的な官僚主義や深刻な高齢化、そして外国人に閉鎖的な文化などを理由に、「日本は何十年も低迷して成長できず、行き詰まっている」と分析した。

 ヘイズ記者は非効率的な官僚主義の例として、1924年に日本のある町で氷河時代のナウマン象の化石が発見されたことにちなみ、町のすべてのマンホールのふたに象の姿がデザインされた事例を挙げた。同記者は「日本の官僚主義は時に恐ろしいほどだし、巨額の公金が意義の疑わしい活動に注ぎ込まれている」と書いた。そして、「有名なゾウの姿をあしらったマンホールふたを『町のすべてのマンホールに使おう』と誰かが決めたのだ」「日本がどうして世界最大の公的債務国になったか、理解するヒントになる」と述べた。

 ヘイズ記者はまた、日本人の3割が60歳を超えていることを指摘し、地方の老年層支配勢力が長期間変わっていないことも停滞の理由として挙げた。同記者は「明治維新や第二次大戦敗戦後も生き残った、圧倒的に男性中心のこの国の支配層は『日本は特別だ』という確信とナショナリズムに彩られている。第二次世界大戦において、『日本は加害者ではなく被害者だった』とこの支配層は信じている」と指摘した。さらに、安倍晋三元首相の祖父・岸信介が戦犯容疑者として逮捕されたのにもかかわらず、自由民主党の結党に参加して首相になったことも指摘した。

 ヘイズ記者は、日本では外国人に対する拒否感が強いことも、日本を過去の沼に閉じ込めている原因だと分析した。その例として、千葉県のある村で自身が経験したことを書いている。この村の住民は60人で、人口減少により消滅の危機にひんしている。同記者によると、ある高齢男性が「自分たちがいなくなったら、だれが墓の世話をするんだ」と嘆いたという。この言葉に同記者が「たとえば、私が家族を連れてここに住んだら、どう思いますか」と尋ねると、高齢男性は戸惑いながら、「それには、私たちの暮らし方を学んでもらわないと。簡単なことじゃない」と答えたとそうだ。これについて、同記者は「この村は消滅へと向かっていた。それでも(高齢男性は)『よそもの』に侵入されるかと思うと、なぜかそのほうがこの人たちには受け入れがたいのだ」と書いた。

 ただし、ヘイズ記者はこうしたさまざまな息の詰まる状況にもかかわらず、過去10年間にわたり日本の食べ物や居心地の良い環境、親切な人々に慣れ親しみ、愛着を抱いていることもつづっている。同記者は「それでもなお、私は日本のことを懐かしく思うだろう」「『新たに繁栄するには、日本は変化を受け入れなくてはならない』と私は頭の中では思っているが、日本をこれほど特別な場所にしているものをこの国が失うのかと思うと、心は痛む」と書いてこの文章をしめくくった。

パク・ソンミン記者

チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版 記事入力 : 2023/01/25 10:01
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/01/25/2023012580032.html

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