[香港 25日 ロイター BREAKINGVIEWS]
- かつて中国株に大挙して押し寄せていた外国人投資家が、景気回復の見通しは暗いと見て今度は一斉に脱出している。
習近平体制には確かに懸念があるが、完全に逃げ出すのは早計だろう。

中国への投資はこれまで常に、海外上場の消費者向け・インターネット関連中国企業に偏っていた。
また外国勢は証券投資よりも、工場建設や企業の大量株式取得を好む傾向にある。
投資のピークだった2021年でさえ、公式統計によると外国勢が保有していた人民元建ての中国株・債券は8兆元(1兆1000億ドル)強と、
米国上場株・債券の27兆ドルに遠く及ばなかった。前者は今、7兆元を割り込んでいる。

オフショア株からの撤退ぶりはさらに激しい。
香港のハンセン指数は年初から4%、ニューヨーク上場中国株で構成するナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数は8%、
それぞれ下落し、後者は2021年12月以来で時価総額が70%も吹き飛んだ。

これはかつて西側の投資家がニューヨークと香港で中国株を競って買い漁り、株価を途方もない水準まで押し上げた現象の裏返しだ。
例えば中国のコーヒーチェーン、瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)は赤字を出していたにもかかわらず、
2020年初頭に時価総額が120億ドルと過去の売上高の実に23倍に達した。その後、同社幹部は不正会計を認めている。

電子商取引のアリババグループとネットサービスの騰訊控股(テンセント・ホールディングス)の株式時価総額は2021年のピーク時から計1兆ドル減少。
外国勢が今なお関心を示している中国株は国有の通信企業と銀行に集中しているようだ。安全かどうかは怪しいが、おずおずとそこに逃避している。

信頼感の喪失は債券にも及んでいる。米国債の利回りが中国国債の利回りを上回った今、海外ファンドは中国のソブリン債と準ソブリン債から資金を引き揚げた。
不動産開発企業や地方政府の資金調達機関がデフォルト(債務不履行)を起こしたため、大半の海外勢は社債市場からも逃げ出した。

もちろん、台湾を巡る戦争が差し迫っていたり、一部の見立てのように習近平国家主席が本当に民間企業の大部分について
国有化を計画していたりするのなら、中国には投資できないだろう。しかし別の仮説も十分現実味がある。
米中関係が安定し、消費と不動産市場が回復するニューノーマル(新常態)が訪れ、年後半は前半よりも良くなるという仮説だ。

そうなれば有望な株を物色して安値で拾うチャンスが訪れるだろう。
例えばリフィニティブのデータによれば、本土株の指標、CSI300指数の構成企業は予想利益に基づく株価収益率(PER)が平均27倍だが、
ハンセン中国企業株指数(H株指数)はこの数値が8倍にとどまっている。
最近開かれたヘッジファンドのイベント「ソーン・インベストメント・コンファレンス」では、職業訓練学校や水力発電などの株価について強気の声が聞かれた。

債券投資家であれば、目下のところ中国と米国のどちらのソブリン債の方がデフォルトを起こす確率が高いのか、考え直してみるかもしれない。
最悪のシナリオを想定する方が簡単だ。だがそれは、より怠惰な方法でもあり、通常は利益を得られる確率が低い。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

2023年5月26日12:05 午後
https://jp.reuters.com/article/us-china-trade-breakingviews-idJPKBN2XH05P