●特別賞  「終わる世界の物語」
宇野 涼平(うの・りょうへい)
1982年6月18日生まれ(29歳)。神奈川県出身、神奈川県在住。

新井素子先生
特別賞の『終わる世界の物語』。主人公四人の友情物語として読むと、実はこれ、結構よくできた作品だと思う。決める処は決まっているし。
ただ、決定的に、世界設定が変。戦争にリアリティなさすぎっていうか、この設定なら、主人公グループ、しょっぱなから死んでるだろうし、日本は滅びている筈。
稲垣理一郎先生
戦場シーンの描写は面白いです。臨場感もある。ただやってること自体は、よくある能力バトルなのが残念です。
冒頭、キャラをいっぺんに出し過ぎて、彫り込みが足りません。だがヒロインの方向性には、オリジナリティーを感じます。
指揮官萌え、みた いな独特のジャンルが作れる人なのかも。
高橋良輔先生
濃密な人間関係で物語は進むが、その人間関係の濃密さにリアリティーが感じられない。
『Draglight/5つ星と7つ星』と同じくこの事態を世界はどう見てどう対処しているのかという視点が一切ないのは気になる。
物語終盤に『辻褄合わせ』という重要言語が出てくるがこの小説そのものが全般に“辻褄合わせっぽく”なっているのが残念だ。文章のテンポは心地よい。
中村航先生
描きたいキャラクターやシーンを描くために、それ以外のことは強引に進めてしまおう――、というのを、思い切りの良さと取るか設定の浅さと取るかは、意見が分かれるところだろう。
気持ち良くストーリーが進んでいるうちはいいが、そうでもないときに、 やはり物足りなさを感じることもある。
描いているのが半径数キロの世界だとすれば、その中だけでも、もう少し地固めがなされれば、一段も二段も深い小説になると思う。
堀井雄二先生
戦場と学校をひたすら往復している印象が強く、世界観の広がりが今ひとつ伝わってこない。戦闘シーンにも強い説得力はない。
主人公たちが友情を深める話に、この設定が本当に必要だったのかと思う。ただ最後に小説として、きちんとしたエンディングが用意されていたのは良かった。