1.そのとき(宇宙始原のとき)無もなく、有もなかった。
  空界もなく、その上の天もなかった。(中略)
  深く測ることのできない水は存在していたのか。

2.その時、死も不死もなかった。夜と昼のしるしもなかった。
  かの唯一物は自力によって風なく呼吸していた。これより他の何も存在しなかった。

3.始原の時、暗黒は暗黒におおわれた。この一切はしるしのない水波だった。
  空虚におおわれて現れつつあるもの、かの唯一物は、熱の力によって生まれ出た。

4.最初にかの唯一物に意欲が現われた。これは思考の第一の種子だった。
  詩人たちは心に探し求めて、有の始原を無に見つけた。(以下略)

― リグ・ヴェーダ「宇宙開闢の歌」(10.129)