インドにおけるイギリスの支配 国際協力専門員 吉田 充夫
http://www.geocities.jp/epcowmjp/papers/Yoshida2008Senmonin-Marx.pdf
https://www.marxists.org/archive/marx/works/subject/newspapers/new-york-tribune.htmhttps://www.marxists.org/archive/marx/works/subject/newspapers/ny-tribune.gif
 カール・マルクス(Karl Marx; 1818-83) は、1851年から1862年にかけての期間、米国の
新聞ニューヨーク・デイリー・トリビューン紙(上図は当時の題字)に、インドや中国をはじめと
する当時のアジアの植民地・従属諸国に関する多数の論説を発表している。

『大ブリテンそのもので産業プロレタリアートが現在の支配階級に取って代わるか、あるいは
インド人自身が強くなってイギリスのくびきをすっかり投げ捨てるか、このどちらかになるまで
は、インド人は、イギリスのブルジョアジーが彼らの間に蒔いてくれた新しい社会の諸要素の
果実を、取り入れることはないであろう。』(「イギリスのインド支配の将来の結果」鈴木正四訳
より)

いくら経済的に社会変革の条件が整っても、インド人自らの努力なくして社会変革は
起こらないというのだ。
 ところで、上述の一節に続けてマルクスは、インドのことを次のように書いていて、思わず膝
を叩きたくなる。

『それはどうなるにしても、われわれは、いくらか遠い将来に、この偉大で興味
深い国が再生するのを見ると、期待して間違いないようである。まったくこの国ときたら、住民は
温雅で、サトィコフ公爵の言葉を借りれば、最下等の階級でさえイタリア人より洗練され器用
であり、その屈従でさえ、ある種の穏やかな気品で埋め合わせられており、天性無気力かと
思えばイギリスの将校を驚かせ、国土はわれわれの諸言語、諸宗教の発祥地であり、ジャート
族は古代ゲルマン人の典型を、ブラーフマンでは古代ギリシャ人の典型をあらわしている国で
ある。』(同上)
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マルクスのインド論にはイギリスの植民地支配の良い部分を指摘していると読めるような側面
もあり、両義的だ。
インドは高齢化を免れた唯一の大国。治安は悪いが選挙がある。中国より覇権国家獲得の
条件はある。