もうひとつ、僕がAIに期待しているのは「共振性」の発見です。
最近、歳を取ったせいか、ねぶた祭りなどの日本伝統の祭りを見ていると
感動して涙があふれるようになりました。

なぜねぶた祭りが強い感動を与えるかと考えると、たくさんの人々が
同じ方向を向いて、同じ強度で、同じことをしているとき、非常に強い共振性が
生まれるからなんですね。そしてある瞬間、すべての動きがぴたりと同調したときに
最大のエネルギーが生み出されます。多数のバイオリズムが同じ波長で
重なり合うことで生まれる膨大なエネルギー、この共振性の発生をAIが
数値化し分析できるようになると、たとえば市民の合意形成や市街地の
動線管理などにも効率的に応用できるのではないかと思っています。


久世CTO:非常に面白い街のあり方ですね。ただ、AIはきっちりとした因果関係を
見つけ出すのは得意ですが、あいまいな因果関係というか、直感的に
「もしかしたらAとBはこう繋がっているんじゃないか」と想定するのは、人間のほうが
優れていると思います。人間とAIがうまく共存していけば、CityOSもより賢く成長して
いきそうですね。

齋藤氏:これからの子供たちは“AIネイティブ”な世代として、AIと共存して生きていくことが
当たり前になっていくはずです。ただ、僕は逆に、AIが生活の中に入ってくればくるほど、
人は、より人間的な原風景への回帰、たとえて言うなら“小津安二郎的な社会”へと
戻っていくようなイメージを持ちます。

先ほども触れましたが、きっとこれからの子どもたちは、AIができることを理解して上手に
使いこなすようになるにつれて、ひとつの専門性を特化させていくよりも“クオンタム指向”が
強くなるんじゃないかと。バイオも、ロボティクスも、アートもある程度理解できる、
そういうマルチな子どもたちが増えてくると思っています。

そうなると、たぶんこれまでよりも自由な発想でモノづくり、街づくりが可能になるはずで、
だからこそより、人間でなければできないことを探し始めるんじゃないでしょうか。
AIは世間で言われているほど、人間の可能性を奪いはしないと思っています。