なぜ、ここまでわかるのか。Iデスク自身が、お茶会に何度か参加し、お花代を渡したことがあるからです。このIデスクの指揮の下、宝塚を記事にしてきたのがK記者。
 以前もニュースレターに書きましたが、一度、記事を書くと文春リークスに新たな情報が寄せられるという流れがあります。20代で小誌の特派記者になったKさんは、物おじせず、明るくよく笑い、たまに京都出身ならではの関西弁も駆使して、特にお年寄りから女子高生まで女性の心を溶きほぐす話術の持ち主。張り込みのプロでもあり、ここ一番では張り込み班から、「Kを」というリクエストがよく入ります。そんな彼女が何度か宝塚を記事にしていくうちに、どんどん詳しくなり、ネタ元もできてきました。
 小誌では、こうして“専門分野”ができてくることがよくあります。「週刊文春」では、配属されたその日から、特に部内研修はなく、いきなり取材にいきます。分野も政治家の直撃取材をしたと思えば、次は芸能人の張り込みをし、翌週は殺人事件で聞き込みといったことも珍しくありません。そして、K記者のように振られたネタをがんばって形にすると、また同じテーマでリークスが来て…という循環が始まります。
 やがて、だんだん“専門家”になっていく。最近でも2年目のN記者が、生命保険のネタを一度スクープして、何度か担当するうちに、保険についてはデスクより詳しくなってきました。NTTの記事を担当しているS記者もそうです。
「週刊文春」の記者を育ててくれるのは、座学よりも、現場でありネタなのです。

 
「週刊文春」編集長 加藤晃彦