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煙草にアンパンマンを印刷したら喫煙率下がるだろ [無断転載禁止]©2ch.net
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0001774mgさん垢版2016/03/27(日) 19:38:41.61ID:oq1nxI/1
なんでやらないのか謎
0851774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:38:52.14ID:uwhjXa2E
何だい、女の癖に、――
0852774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:39:07.91ID:uwhjXa2E
喧嘩ならいつでも向って来い。――」
0853774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:39:23.60ID:uwhjXa2E
いつか泣いていた慎太郎は、菊の花びらが皆なくなるまで、剛情に姉と一本の花簪を奪い合った。
0854774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:39:39.39ID:uwhjXa2E
しかし頭のどこかには、実母のない姉の心もちが不思議なくらい鮮に映っているような気がしながら。――
0855774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:39:55.03ID:uwhjXa2E
慎太郎はふと耳を澄せた。
0856774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:40:10.80ID:uwhjXa2E
誰かが音のしないように、暗い梯子を上って来る。――
0857774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:40:26.45ID:uwhjXa2E
と思うと美津が上り口から、そっとこちらへ声をかけた。
0858774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:40:42.21ID:uwhjXa2E
眠っていると思った賢造は、すぐに枕から頭を擡げた。
0859774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:40:57.97ID:uwhjXa2E
「お上さんが何か御用でございます。」
0860774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:41:13.63ID:uwhjXa2E
美津の声は震えていた。
0861774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:41:29.45ID:uwhjXa2E
父が二階を下りて行った後、慎太郎は大きな眼を明いたまま、家中の物音にでも聞き入るように、じっと体を硬ばらせていた。
0862774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:41:45.11ID:uwhjXa2E
すると何故かその間に、現在の気もちとは縁の遠い、こう云う平和な思い出が、はっきり頭へ浮んで来た。
0863774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:42:00.79ID:uwhjXa2E
これもまだ小学校にいた時分、彼は一人母につれられて、谷中の墓地へ墓参りに行った。
0864774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:42:16.54ID:uwhjXa2E
墓地の松や生垣の中には、辛夷の花が白らんでいる、天気の好い日曜の午過ぎだった。
0865774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:42:32.30ID:uwhjXa2E
母は小さな墓の前に来ると、これがお父さんの御墓だと教えた。
0866774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:42:48.07ID:uwhjXa2E
が、彼はその前に立って、ちょいと御時宜をしただけだった。
0867774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:43:03.84ID:uwhjXa2E
「それでもう好いの?」
0868774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:43:19.63ID:uwhjXa2E
母は水を手向けながら、彼の方へ微笑を送った。
0869774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:43:35.39ID:uwhjXa2E
彼は顔を知らない父に、漠然とした親しみを感じていた。
0870774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:43:51.15ID:uwhjXa2E
が、この憐な石塔には、何の感情も起らないのだった。
0871774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:44:06.90ID:uwhjXa2E
母はそれから墓の前に、しばらく手を合せていた。
0872774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:44:22.74ID:uwhjXa2E
するとどこかその近所に、空気銃を打ったらしい音が聞えた。
0873774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:44:38.50ID:uwhjXa2E
慎太郎は母を後に残して、音のした方へ出かけて行った。
0874774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:44:54.26ID:uwhjXa2E
生垣を一つ大廻りに廻ると、路幅の狭い往来へ出る、――
0875774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:45:10.01ID:uwhjXa2E
そこに彼よりも大きな子供が弟らしい二人と一しょに、空気銃を片手に下げたなり、何の木か木の芽の煙った梢を残惜しそうに見上げていた。――
0876774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:45:25.68ID:uwhjXa2E
その時また彼の耳には、誰かの梯子を上って来る音がみしりみしり聞え出した。
0877774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:45:41.47ID:uwhjXa2E
急に不安になった彼は半ば床から身を起すと、
0878774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:45:57.12ID:uwhjXa2E
「誰?」と上り口へ声をかけた。
0879774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:46:12.96ID:uwhjXa2E
声の持ち主は賢造だった。
0880774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:46:28.73ID:uwhjXa2E
「どうかしたんですか?」
0881774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:46:44.34ID:uwhjXa2E
「今お母さんが用だって云うからね、ちょいと下へ行って来たんだ。」
0882774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:47:00.15ID:uwhjXa2E
父は沈んだ声を出しながら、もとの蒲団の上へ横になった。
0883774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:47:15.92ID:uwhjXa2E
「用って、悪いんじゃないんですか?」
0884774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:47:31.59ID:uwhjXa2E
「何、用って云った所が、ただ明日工場へ行くんなら、箪笥の上の抽斗に単衣物があるって云うだけなんだ。」
0885774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:47:47.33ID:uwhjXa2E
それは母と云うよりも母の中の妻を憐んだのだった。
0886774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:48:03.37ID:uwhjXa2E
「しかしどうもむずかしいね。
0887774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:48:19.10ID:uwhjXa2E
今なんぞも行って見ると、やっぱり随分苦しいらしいよ。
0888774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:48:34.89ID:uwhjXa2E
おまけに頭も痛いとか云ってね、始終首を動かしているんだ。」
0889774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:48:50.66ID:uwhjXa2E
「戸沢さんにまた注射でもして貰っちゃどうでしょう?」
0890774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:49:06.40ID:uwhjXa2E
「注射はそう度々は出来ないんだそうだから、――
0891774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:49:22.15ID:uwhjXa2E
どうせいけなけりゃいけないまでも、苦しみだけはもう少し楽にしてやりたいと思うがね。」
0892774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:49:37.93ID:uwhjXa2E
賢造はじっと暗い中に、慎太郎の顔を眺めるらしかった。
0893774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:49:53.58ID:uwhjXa2E
「お前のお母さんなんぞは後生も好い方だし、――
0894774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:50:09.32ID:uwhjXa2E
どうしてああ苦しむかね。」
0895774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:50:25.14ID:uwhjXa2E
二人はしばらく黙っていた。
0896774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:50:40.99ID:uwhjXa2E
「みんなまだ起きていますか?」
0897774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:50:56.75ID:uwhjXa2E
慎太郎は父と向き合ったまま、黙っているのが苦しくなった。
0898774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:51:12.42ID:uwhjXa2E
「叔母さんは寝ている。
0899774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:51:28.19ID:uwhjXa2E
が、寝られるかどうだか、――」
0900774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:51:44.04ID:uwhjXa2E
父はこう云いかけると、急にまた枕から頭を擡げて、耳を澄ますようなけはいをさせた。
0901774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:51:59.70ID:uwhjXa2E
お母さんがちょいと、――」
0902774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:52:15.53ID:uwhjXa2E
今度は梯子の中段から、お絹が忍びやかに声をかけた。
0903774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:52:31.22ID:uwhjXa2E
慎太郎は掻巻きを刎ねのけた。
0904774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:52:46.86ID:uwhjXa2E
「お前は起きなくっても好いよ。
0905774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:53:02.65ID:uwhjXa2E
何かありゃすぐに呼びに来るから。」
0906774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:53:18.47ID:uwhjXa2E
父はさっさとお絹の後から、もう一度梯子を下りて行った。
0907774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:53:34.21ID:uwhjXa2E
慎太郎は床の上に、しばらくあぐらをかいていたが、やがて立ち上って電燈をともした。
0908774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:53:49.97ID:uwhjXa2E
それからまた坐ったまま、電燈の眩しい光の中に、茫然とあたりを眺め廻した。
0909774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:54:05.73ID:uwhjXa2E
母が父を呼びによこすのは、用があるなしに関らず、実はただ父に床の側へ来ていて貰いたいせいかも知れない。――
0910774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:54:21.52ID:uwhjXa2E
そんな事もふと思われるのだった。
0911774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:54:37.27ID:uwhjXa2E
すると字を書いた罫紙が一枚、机の下に落ちているのが偶然彼の眼を捉えた。
0912774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:54:53.05ID:uwhjXa2E
彼は何気なくそれを取り上げた。
0913774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:55:08.69ID:uwhjXa2E
後は洋一の歌になっていた。
0914774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:55:24.48ID:uwhjXa2E
慎太郎はその罫紙を抛り出すと、両手を頭の後に廻しながら、蒲団の上へ仰向けになった。
0915774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:55:40.12ID:uwhjXa2E
そうして一瞬間、眼の涼しい美津の顔をありあり思い浮べた。…………
0916774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:55:55.88ID:uwhjXa2E
慎太郎がふと眼をさますと、もう窓の戸の隙間も薄白くなった二階には、姉のお絹と賢造とが何か小声に話していた。
0917774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:56:11.52ID:uwhjXa2E
彼はすぐに飛び起きた。
0918774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:56:27.18ID:uwhjXa2E
「よし、よし、じゃお前は寝た方が好いよ。」
0919774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:56:42.80ID:uwhjXa2E
賢造はお絹にこう云ったなり、忙しそうに梯子を下りて行った。
0920774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:56:58.56ID:uwhjXa2E
窓の外では屋根瓦に、滝の落ちるような音がしていた。
0921774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:57:14.32ID:uwhjXa2E
慎太郎はそう思いながら、早速寝間着を着換えにかかった。
0922774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:57:30.09ID:uwhjXa2E
すると帯を解いていたお絹が、やや皮肉に彼へ声をかけた。
0923774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:57:46.20ID:uwhjXa2E
「お早う、お母さんは?」
0924774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:58:01.99ID:uwhjXa2E
「昨夜はずっと苦しみ通し。――」
0925774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:58:17.64ID:uwhjXa2E
「自分じゃよく寝たって云うんだけれど、何だか側で見ていたんじゃ、五分もほんとうに寝なかったようだわ。
0926774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:58:33.42ID:uwhjXa2E
そうしちゃ妙な事云って、――
0927774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:58:49.20ID:uwhjXa2E
私夜中に気味が悪くなってしまった。」
0928774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:59:04.97ID:uwhjXa2E
もう着換えのすんだ慎太郎は、梯子の上り口に佇んでいた。
0929774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:59:20.72ID:uwhjXa2E
そこから見える台所のさきには、美津が裾を端折ったまま、雑巾か何かかけている。――
0930774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:59:36.52ID:uwhjXa2E
それが彼等の話し声がすると、急に端折っていた裾を下した。
0931774mgさん垢版2018/03/11(日) 05:59:52.15ID:uwhjXa2E
彼は真鍮の手すりへ手をやったなり、何だかそこへ下りて行くのが憚られるような心もちがした。
0932774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:00:07.92ID:uwhjXa2E
「妙な事ってどんな事を?」
0933774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:00:23.60ID:uwhjXa2E
半ダアスは六枚じゃないかなんて。」
0934774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:00:39.40ID:uwhjXa2E
「頭が少しどうかしているんだね。――
0935774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:00:55.17ID:uwhjXa2E
「今は戸沢さんが来ているわ。」
0936774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:01:10.84ID:uwhjXa2E
慎太郎は美津がいなくなってから、ゆっくり梯子を下りて行った。
0937774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:01:26.50ID:uwhjXa2E
五分の後、彼が病室へ来て見ると、戸沢はちょうどジキタミンの注射をすませた所だった。
0938774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:01:42.35ID:uwhjXa2E
母は枕もとの看護婦に、後の手当をして貰いながら、昨夜父が云った通り、絶えず白い括り枕の上に、櫛巻きの頭を動かしていた。
0939774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:01:58.16ID:uwhjXa2E
戸沢の側に坐っていた父は声高に母へそう云ってから、彼にちょいと目くばせをした。
0940774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:02:13.80ID:uwhjXa2E
彼は父とは反対に、戸沢の向う側へ腰を下した。
0941774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:02:29.47ID:uwhjXa2E
そこには洋一が腕組みをしたまま、ぼんやり母の顔を見守っていた。
0942774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:02:45.26ID:uwhjXa2E
「手を握っておやり。」
0943774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:03:01.32ID:uwhjXa2E
慎太郎は父の云いつけ通り、両手の掌に母の手を抑えた。
0944774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:03:17.09ID:uwhjXa2E
母の手は冷たい脂汗に、気味悪くじっとり沾っていた。
0945774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:03:32.87ID:uwhjXa2E
母は彼の顔を見ると、頷くような眼を見せたが、すぐにその眼を戸沢へやって、
0946774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:03:48.50ID:uwhjXa2E
もういけないんでしょう。
0947774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:04:04.27ID:uwhjXa2E
手がしびれて来たようですから。」と云った。
0948774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:04:19.92ID:uwhjXa2E
「いや、そんな事はありません。
0949774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:04:35.73ID:uwhjXa2E
もう二三日の辛棒です。」
0950774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:04:51.51ID:uwhjXa2E
戸沢は手を洗っていた。
0951774mgさん垢版2018/03/11(日) 06:05:07.26ID:uwhjXa2E
「じきに楽になりますよ。――
レス数が950を超えています。1000を超えると書き込みができなくなります。

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