(>>159のつづき)

羽入氏が言うとおり、私のせいでT君が亡くなったのかどうか、真相はいまだ
に分からない。前述のとおり、私は、この事件について書類送検され、不起訴
処分になったが、その際にも、T君の死因が何であったのかについては、説明
を受けなかった。検察庁から直接、聞いたわけではないが、私が間接的に聞い
たのは、「不起訴処分が答えである、としか言えない」というものだった。

私も個人的に医療関係者に話をうかがい、「私がお湯をかけたことが、T君の
直接の死因だったと言われているのですが、やはりそうなのでしょうか」と
尋ねてみたが、「あなた自身がつかっていた湯船のお湯が、ショック死を招く
ほどの高温だったとは考えにくいし、むしろ、その程度の温度のお湯をかける
ことは適切な処置だったとも言える」という答えだった。

しかし、この答えで、私の罪の意識が軽くなったり、消えて無くなることは
決してなかった。あのとき、私がその場にいなければ、5人が私と一緒でなけ
れば、彼らはみんな死なずに済んだ、という反実仮想は、永遠に妥当し続け
るからです。

羽入氏はさらに私を嘘つき、偽善者として論難するだろうが、この反実仮想
とそれにもとづく罪の意識は、この24年間、私の心からは消えたことがない。

(つづく)