(>>163のつづき)

「人殺しの市野川が無罪のまま、のうのうと東大駒場で社会学の教員を
やっている」と、これだけはっきりと活字にされたのだから、大学等に
もこれから迷惑をかけることになってしまうかもしれない。羽入氏が望
んでいることの一つも、それだと思うし、私一人が彼の憎悪の対象であ
るならば、羽入氏がそう望むことに対して、私は強く反論することがで
きない。

しかし(杞憂かもしれず、そうであることを願っているが)私がお世話
をしている/してきた学生さんたちに、私のことが理由で、何か不利益
がもたらされるのだとしたら、私はいたたまれない(羽入氏もそれは望
んでいないはずだ)。

それからもう一つ、羽入氏は、私の両親の当時の対応についても、槍玉
にあげている(166頁)。すべてが羽入氏の言うとおりだと私は思わない
が、確かに、不適切な行動が私の両親にもあったのかもしれない。しかし、
年老いた二人が、今になって、羽入氏のこの記述を目にすることがあると
したら、私はやはりいたたれない。責められるべき人間は、基本的に私一
人だと思うから。

(つづく)