市役所で戸籍謄本の写しを貰う申請書を書くとする。
備え付けのペンは使わない。
革の鞄から革のペンケースに入ったお気に入りのペリカンホワイトトートイスボールペンを取り出す。
サラサラと書き込み、受付にだす。
自分の順番まで待ち合い室で待つ。この時、革の手帳を取り出し、予定、TODOなどを確認する。
受付に呼び出され、戸籍謄本を受け取る。
戸籍謄本に嫁と娘の名前があることを確認し、丁寧に畳み封筒に入れる。
受付の担当してくれた人に、「今日、家族の絆を再確認できた。ありがとう」と告げ、市役所を後にする。
市役所を出てすぐのロータリーでタクシーに乗り込み、職場に向かう。
タクシーの中で、先程受け取った戸籍謄本をみて、生まれたばかりの娘の名前を指でなぞる。
そして、娘を産んでくれた嫁に、今まで以上に親愛を深めた。
勢いあまって、タクシーの運転手に、「あの、俺、お父さんになったんです」と、言う。
タクシーの運転手さんは面倒臭そうな顔もせず、バックミラー越しにこちらを見て、「おめでとうございます」といった。
その言葉を聞いて、私の両目から涙が流れ落ちた。
ありがとう。