「同じように看護師を目指していた友人に言われたことがあります。
 白衣は白い色をしているが、その白は潔白の白さではないと。
 どんな色にでもなり得る白なのだと。(中略) 今日卒業する六十二名の学生たちが、
 この先、何色の白衣をまとっているかは、それぞれの生き方にかかっているのです」

 おそらく主人公が考えている「白さ」とはベースとなる白さなんじゃないかな、と。
ベースとなる色が赤や青や黄色ならば、色を染めても他の色に染まりきることはできない。
だけどベースが白ならば、まったく他の色に染まることもできるし、色を落とせばまた白に戻る。
そんな変幻自在な白という色(「色」というか、色の不在)。なんにでもなれる白。
だがしかし、そうした空白とか余白とかの真っ白なキャンバスは各人の選択や責任によって色づけされて形になっていく。
そういう白に色を塗る覚悟みたいなものがわれわれ一人ひとりには必要だし、
またその責任を負っている、ということを主人公は言いたかったのはあるまいか。
そんなことを夜中につらつらと考えた。