吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日
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さて表紙(と帯の推薦文)をこうの史代氏が手掛けているのだが、
十字架の指輪やマンドリンなど、本文中に出てくるアイテムまでがきちんと描かれていて驚かされる。
そういえば、この日記がかもす雰囲気は、こうの史代作品とよく似ていると思った。


戦争や原爆をテーマにしたこうの史代作品の最大の特徴は、
あやうくカビが生えそうになっている戦争や原爆を、
21世紀の人間に改めてフレッシュに突きつけたところにあったと思う。
「過去にこんなひどいことがありました。忘れないようにしましょうね」というのではなく
、「この世界の片隅に」のように、メシの支度や掃除の仕方まで、
日常の積み重ねを丁寧に描くことで、
「今もこれからも普通に起きえること」と、時間を軽く超越した普遍性というものを獲得していたと思う。


この「吉原花魁日記」もそうした日常の積み重ねのおかげか、
またかなり平易に書かれた文章のおかげか、とても80年も前の出来事とは思えない新鮮さがある。
作品が保有する力のおかげもあるのだが、たぶん2010年の今だからこそ近しく思えるのかもしれない。

p://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20100622