>>243
○鈴木
そういうIWCから脱退する日本の決断について、佐々木監督はイエス(賛成)、ノー(反対)でいうとどちらですか?

○佐々木
間違いなくイエスですね。
私はIWCという組織の存続の意義を問わないとダメだと思いますよ。
日本国内ではIWC脱退を問題視して批判していますよね。
でもまず世界が問題としているのは、IWC脱退ではなく、商業捕鯨の再開です。

○鈴木
日本人はIWCがどういった組織なのかよく知りませんし、今回の脱退表明の報道を受けて、世界大戦の時の国際連盟脱退とイメージを重ねる向きもあります。

○佐々木
そういうのとは全然違いますよ。
アイスランドのようにIWCを一回脱退して戻ってきている国もあるわけで、一度脱退したら取り返しがつかないわけじゃありません。
IWCに加盟していなくても捕鯨をしているカナダやインドネシアもあります。
だからIWCに加盟すればいいというものではありません。
そもそも終戦直後に国際捕鯨取締条約(※IWCはこの条約を基に設立)ができたのは、各国が捕鯨を行っていて、
「このまま鯨資源が枯渇しないよう、捕り続けられるようにしましょうね」ということからでした。
しかし加盟国がどんどん鯨を捕らないほうに変わっていったので、本来のIWCの目的から外れていったのですね。
ですから今こそIWCそのものの存在意義を問うべきだと思うんです。

○鈴木
2010年は反捕鯨映画「ザ・コーブ」がアカデミー賞を取って、世界的に日本の捕鯨やイルカ漁に批判が集まった年です。
そんな時こそ、日本は世界のメディアを集めて積極的に反論をしないといけないのに、なぜそこまで内向きになってしまうのでしょうか。

○佐々木
間違いなく日本の対応は間違っています。
もはやIWC脱退以前の、伝え方、コミュニケーションの問題ですよ。
海外に対しても、日本国民に対しても、政府は説明責任があると思います。
これだけ批判されているのに、IWC脱退して、しかも商業捕鯨を再開するのなら、本当に周到な説明が必要だと思いますよ。

○鈴木
周到な説明とは?

○佐々木
今回まずいなと思ったのは、菅官房長官が脱退を発表した際に「科学的根拠に基づいて」と言ってましたが、その具体的な数字を示さなかったことです。
北西太平洋でミンククジラを捕るのだったら、生息数がどのくらいいて、自分たちはこれくらい捕るというような。
そういう説明の仕方をすれば納得すると思いますが、「科学的根拠」と言っても曖昧だし、何の根拠なのかわからない。
商業捕鯨と言っても、どのようなスケールで、商業として持続的に続けていけるのかということですよね。