ベーリング海両岸地域のエスキモー社会は
「文明圏」に到達するにはちと足りなかったが、
遠距離交易を主軸とする「文化圏」としては結構いい線いっていた。
(同語族でもカナダやグリーンランドのイヌイットは家族単位での移住社会が専らだったのに対し)

・年間を通じ定住していた・・・捕鯨と漁撈が主生業のため大規模な集落を形成。
・公共性のある建造物の存在・・・記念碑を伴う墓地区画、祭祀専用の儀礼小屋等があった。
                     「文明」の定義の一つによく挙げられる要件。
・社会階層の分化・・・アラスカ太平洋岸のエスキモーは祭司・貴族・平民・奴隷に分化。
              文明発生の要件の一つかな。
・余剰生産物・・・ご存じポトラッチ文化圏はベーリング海峡両岸域まで伸びていた。
           食うや食わずの生活なら高床式倉庫がツンドラに立ち並ぶこともないわな。
・長距離交易網と航海能力・・・北米大陸側はデネ系インディアンとの内陸交易や
                    太平洋岸沿い(トーテムポールが盛んな一帯ね)に広がり、
                   アジア大陸側はレナ川流域やオホーツク海沿岸まで広がる交易網。
                   陸路はトナカイ橇、犬ぞり。海路は大型ウミアックやカヤック船団。
・リンガフランカの流通・・・これはアジア側のチュクチ語が担っていた。
                 北米大陸・アジア大陸両岸で交易言語として用いられた。
・文字の使用・・・上のスレで登場した、シベリア側のチュクチ文字とアラスカ側のユフトゥン文字。
           範囲を広げれば極東シベリアのユカギール文字も入る?
           やはり文字も文明を定義に挙がる要件。
           ただし民族叙事詩のような長期保存記録にはあまり用いられなかった様子。
・灌漑農耕は・・・あるわけないないw 文明発生の必須要件ではあるが。

あと役畜は・・・イヌとトナカイがいるからパスか。