唐朝に仕えた柳公権は優れた書家であり、とりわけ楷書は後世の手本とされたが、皇帝からは
上奏文は(通常であれば楷書や行書であるが)草書でもよいとされた程他の書体にも優れてお
り、中国のみならず近隣諸国から来た人々も彼の書を求めて止まなかった。
謝礼に贈られた品は蔵に積まれていたが、時に家僕が盗み出すことがあり、ばれれば分からな
いと誤魔化したものの、柳は「銀盃が仙を得て飛んで行ったかな」と笑って済ませた。
ただ、硯と筆と本だけは自ら鍵を管理していたという。