フルトヴェングラーのオペラ史観はドイツ語とドイツ文化
特にウェーバーからワーグナーに至る発展史に注目した独特なものだ。
それだけに前史を扱うのにモーツァルトの魔笛はともかく
バッハのマタイ受難曲まで持ち出すのは議論の余地があるだろう。
ザルツブルクでの上演の背景には巨匠の自己主張があるようだ。

一方で巨匠の喜歌劇への偏見は拭い難いもので
実際には18世紀はイタリア物、19世紀前半はフランス物が流行し
19世紀はドイツ語版の上演も盛んだったのを
あくまでもウェーバーからワーグナーの立場で押し通す。

それでも巨匠の主張は論より証拠のコンサートで証明することにあるので
ザルツブルクでののんびりした時間を過ごすのも有意義かもしれない。
ポスト・ワーグナーのプフィッツナーなどを振ってくれればなお良かったのに
時間が足らなかったかもしれない。