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18日に親北朝鮮団体が駐韓米国大使公邸へ集団乱入した際、現場に出動した20代の男性義務警察(義警。兵役の代わりに警察で勤務する警察官)3人は、最小限の犯行制圧用具である警棒(別名『制圧棒』)すら携帯していなかったためデモ隊の男性2人と女性1人に抵抗されてしまい、塀の乗り越えを許す結果になっていたことが判明した。国際法上、ウィーン条約の署名国は、自国内の外国公館地域に対する侵入、侵害、品位を損なう行為などを防止すべき「特別な義務」を負う。だがこうした義務を積極的に遂行しようとする意志が韓国警察には最初からなかったのではないか、という指摘がなされている。

 20日に韓国大学生進歩連合(大進連)がインターネット上で公開した映像によると、当時デモ隊の19人が鉄製のはしご2基を使ってソウル市中区にある米国大使公邸の塀を乗り越え始めた直後、周囲をパトロールしていた義警3人が現場に駆け付けた。全員が非武装の状態だった。「警察装備使用規定」によると、警察は違法な集会・デモによる財産・公共施設への危険を防止するため、警棒を使用できる。だが義警らは警棒を携帯すらしていなかった。南大門署側は「最近、大使公邸警備の過程で警棒を使うケースがなかったため、携帯するなと指示を下しておいた状態だった」と明かした。

 素手でデモ隊に立ち向かった義警の1人は、デモ隊の男性たった1人に制圧された。ほかの義警2人は男性1人と女性1人から服をつかまれて左右に振り回され、塀の乗り越えを阻止できず、なんとか逃れて無線で支援を要請した。こうして義警を腕力で制圧していた現行犯のうち1人は、後に応援の警察官数十人が駆け付けた状態でも20分近く周囲を回りながら警察を非難し、反米スローガンを叫んだ。義警は、その様子をただ見守っていた。

警察は、大使公邸の塀が始まる場所で警備に立っていたが、デモ隊数十人は鉄製のはしご2基を持っていたにもかかわらずこの場所を無事に通過し、公邸正門近くまで行った。警備責任者のキム・インビョン南大門警察署警備課長は「不審検問をして当然だったのにしなかったのは事実」としつつ「当時義警がなぜ検問しなかったのか、理由は私も知らない」と語った。

 デモ隊のうち数人は背中にリュックを背負って塀を越えた。「凶器や危険物は所持していない」とは確信できない状況だった。にもかかわらず警察は、デモ隊のはしごを積極的に撤去しなかった理由について「デモ隊がけがすると思って無理はしなかった」と説明した。

 警察による米大使公邸警備の失敗は、この1年余りの間だけでも2度目だ。昨年9月、40代の中国朝鮮族の女性が塀を乗り越えて入り込み、数時間後にようやく内部の警備員に発見された。当時警察で、この事件関連で懲戒された人物は誰もいなかった。

 警察は、今回現場で逮捕した19人のうち9人について共同住居侵入、公務執行妨害、「集会および示威に関する法律」違反などの容疑で19日に拘束令状を申請した。ところが残る10人は、黙秘権を行使しているにもかかわらずおよそ30時間後に釈放した。韓国刑法上、現行犯で逮捕した場合は48時間まで留置場に拘束できる。このようなことをしていながらも、警察関係者は「加担者は厳重に捜査し、大使公邸の警備も強化したい」とコメントした。しかし20日、米大使公邸の警備に立った義警は、依然として警棒を携帯していなかった。

米国務省は19日(現地時間)、駐韓米国大使公邸乱入事件について「韓国が全ての駐韓外交公館を保護するための努力を強化することを強く促す(urge)」という論評を出した。

 韓国では現政権になって公権力の無力化が加速している、という指摘がなされている。文在寅(ムン・ジェイン)政権は発足直後の2017年6月、警察組織内に外部の人間が参加する「改革委員会」という組織をつくった。この委員会は、同年9月に「集会・デモの自由保障のための勧告」を打ち出した。▲デモ鎮圧用の放水車の使用制限▲デモに対する「車壁」設置の原則的禁止▲集会・デモ参加者に対する交通妨害罪の適用禁止−などが主な内容だった。これを、当時の李哲聖(イ・チョルソン)警察庁長は全面的に受け入れた。李・元庁長は「人権警察に生まれ変わるため」だとした。それから1カ月後、警察は故・白南基(ペク・ナムギ)氏の遺族が国を相手取って起こした訴訟への対応を中止し、遺族側の主張を全て受け入れた。白氏は2015年の暴力集会で警察のバスを乗り越えようとしたところ、放水を浴びて倒れ、後に死亡した人物だ。

郭来乾(クァク・レゴン)記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/10/21/2019102180063.html
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2019/10/21 10:40