文在寅(ムン・ジェイン)大統領がこのほど「犬の食用禁止」の意向を公式に表明し食通たちをあわてさせている。韓国名物の犬肉料理に対しては以前から内外で批判があり賛否両論が戦わされてきた。今回、政府としてついに禁止の方向を打ち出したことになる。背景にはペットブームの広がりから国内で反対論が急増していることがある。任期末の大統領として世論の支持をにらんだ絶好の業績作り≠ニいうわけだ。

こうしたニュースが伝わると「禁止される前に食っておこう…」という心理になる。ところが近年、都心では犬肉料理店が見当たらない。そこで都心を離れた老舗の有名店を思い出し久しぶりに出かけた。『サリジップ(萩の家)』という屋号が筆者お気に入りの店だが、同じ心理からだろうかランチタイムなのに結構にぎわっていた。

定番の赤辛い鍋モノと湯がいた柔らか肉のスライスをいただいた。犬肉と知らなければことさら抵抗感も違和感もない。実はあれは味よりも食前・食後にどこか気合が入る一種の心理食品≠ネのだ。というのも食通たちには犬肉料理について精力信仰≠フようなものがあって「食う」あるいは「食った」ことを自慢したがる。となるとこの信仰がある限り、いくら禁止してもひそかに流通するに違いない。(黒田勝弘)

産経新聞 ソウルからヨボセヨ 2021/10/3 07:59黒田 勝弘
https://www.sankei.com/article/20211003-ZBESWXWQJFJXTK2H5HXQZN6RWE/