政府は、観光などの短期滞在ビザ(査証)の取得を免除された外国人を対象に、日本入国前に活動内容や滞在先などを申告させ、事前審査する方針を固めた。問題があると判断された外国人の航空機搭乗を認めないことで、不法就労やテロ行為を目的とした入国を阻止する狙いがある。

米国がテロ防止などの目的で入国前に義務づけている電子渡航認証(ESTA=エスタ)を参考に、「日本版エスタ」として訪日客を6000万人に伸ばす目標達成年である2030年までの運用開始を目指す。

 対象となるのは、観光や出張、親族訪問などを目的とした短期滞在ビザの取得を免除された国・地域からの入国希望者で、4月時点で71か国・地域に上っている。具体的には、渡航予定日の数日前までに▽氏名▽入国目的や活動内容▽宿泊場所――などをオンラインで出入国在留管理庁に申告させる。審査官が犯罪者や要注意人物が記された「ブラックリスト」と照合するなどし、不法就労などの可能性がないと判断すれば渡航を認め、疑いがあれば搭乗を拒否する。

 現在は、国際線を運航する航空会社から離陸後30分以内に搭乗者情報を提供してもらい、リストと照合している。本来は入国審査を通過できない外国人もいったんは日本の空港に到着できてしまうため、到着後の審査で退去命令を受けて逃走したケースもあった。入国前の事前審査でこうしたトラブルを防げるほか、審査の負担軽減につながることなども期待されている。

 入国前の審査を強化するのは、来日外国人が不法残留する事例が後を絶たないためだ。入管庁によると、24年1月時点の不法残留者は7万9113人と10年前から約2万人増加し、そのうち62・9%にあたる4万9801人が短期滞在の在留資格だった。政府は観光立国を掲げてビザ免除対象国を広げる一方、不法残留は治安悪化につながりかねないとして水際対策の厳格化が必要だと判断した。

 日本版エスタの導入に先立ち、搭乗手続きをした際に搭乗者情報が入管庁に送られる仕組みも24年度中に構築する予定だ。出発前にリストとの照合を可能にし、該当すれば航空会社に連絡して搭乗を阻止する。

読売新聞 2024/04/10 15:00
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