世界的な観光ブームが巻き起こるなか、各国では、オーバーツーリズム対策としての「観光税」を導入する動きが広がっている。
イタリアのベネチアでは今春、外国や州外からの15歳以上の訪問者に5ユーロ(約835円)の入島税を徴収する措置を
試験的に導入した。
また、インドネシアのバリ島では今年2月から、同島を訪れる外国人観光客に対し、約1400円の入島税の徴収を開始している。

そして日本でも、類似の観光税が検討されている。
3月、大阪府の吉村洋文知事は、府内に宿泊する訪日外国人から一定額の税金を徴収する制度の創設を検討すると表明した。
税収は観光資源の保護やオーバーツーリズム対策に充てるという。

これまでにも、出国時に一律1000円を徴収する国際観光旅客税や、自治体によっては宿泊料金に上乗せする宿泊税など、
「旅行」という行為に対して課す税金は存在している。

ただ、それらの税に国籍は関係なく、日本人でも外国人でも平等に課税されてきた。大阪府で創設が検討される制度は、
訪日外国人に限定して徴収される点で大きく異なっている。

事実、訪日外国人急増によるオーバーツーリズムは日本各地で大きな社会問題となっており、対策は急務だ。
オーバーツーリズムによる諸問題を解決するための財源を訪日外国人から徴収するというのは筋が通っているように思える。
しかしあくまで大切なのは、財源の徴収はもとより、それをどう使うかである。

例えば、「マリオカートの世界を実体験できる」と、外国人観光客に人気であるが、
日本人からは不満の声も上がる「公道カート」を例に考えてみたい。

公道カートに利用される排気量50cc未満の車両の価格は50万円程度で、車検、車庫証明は不要、自動車税も軽く、
ランニングコストは安く済む。そして走行するのは無料で利用できる公道だ。
都内の公道カートツアーの価格の一例は、1時間半ほどのツアーで1万5000円となっており、
かなり利幅のあるビジネスであることが想像できる。

一方で、騒音や渋滞、事故に巻き込まれるリスクなどを負うのは、走行ルートとなっている道路を利用する歩行者や運転者や
周辺の住民である。公共施設には「受益者負担」という大原則があるが、公道カートに関しては、受益者は事実上、
何も負担することなく、一般市民が高いコストを支払わされているのが現状だ。

この公道カート問題を財源の投入によって解決することは困難に思える。
必要なのは、走行エリアや時間帯の限定などの規制をはじめとする「具体的な政策」ではないだろうか。
■奥窪優木

2024.5/1 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20240501-E2GP74M7DFK5BPZR67CMEOB5FY/