政府は4日、首相官邸でデジタル・ガバメント閣僚会議を開き、マイナンバーカードの普及に向けた総合的な対策を決
めた。2021年3月から健康保険証として使えるようにし、22年度中に全国のほぼすべての医
療機関が対応するようシステムの整備を支援する。21年分の確定申告からはカードを使って簡単に医療費控除の手続きもできるようにする。

マイナンバーカードの交付実績は5月30日時点で約1702万枚にとどまる。政府が決定した対策には「22年度にほとん
どの住民が保有していると想定する」と明記し、3年後をメドに1億枚以上を普及させる方針だ。8月をメドに具体的な工程表も公表する。

普及策の柱の一つが、健康保険証の代わりに医療関連のサービスで利用できるようにすることだ。保険証は日常
的に利用する人が多いため、代用できれば普及が進むとみている。医療機関にはカードの読み取り端末が必要にな
るため、政府が支援する。オンラインで資格を確認するため、失効した保険証の不正利用などを防ぐ効果もある。

医療費控除の手続きも簡単にする。利用者はまず、確定申告する際に国税庁のサイトからマイナンバーカードで個人
認証する。「医療費通知」のボタンを押すと、1年分の医療費の合計額がサイト上で一覧できるようにする。合計額が控除
の適用基準を超えていた場合は、そのままサイト上で申告もできる。

政府の運営サイト「マイナポータル」で様々な医療情報も閲覧できる。21年3月からは特定健康診査(メタボ健診)の情報、
同年10月からは過去の投薬履歴を見ることができるようにする。

20年度からはカードに電子マネーを貯めて買い物に使えるようにする。カードを使って買い物をすれば国からポイン
トの還元が受けられる仕組みも導入する。地方自治体が指定する小売店や通販サイトで利用できる。早期にカードの
取得申請をした人には還元率を割り増すことも検討する。

いまはカードを取得するには自治体の窓口に出向く必要がある。今後は、企業やハローワーク、学校、郵便局、病院
、介護施設などに自治体の職員が足を運び、その場で申請を受け付ける取り組みも始める。

申請が集中して配布が滞ることがないように、どのように交付するかの実行計画をつくるよう自治体に求める。普及率
を高めるため、国家公務員や地方公務員は19年度中にカードを取得するよう促す計画だ。

菅義偉官房長官は4日の会議で「行政のあり方を大きく変革する、今後を左右する取り組みだ」と述べた。「具体化にあ
たっては、従来の考え方や慣習にとらわれず取り組んでいきたい」と語った。