>>422
石川さんの写真展に写っているユージンが手にしているカメラの多くはミノルタのSR-T101かSR-T SUPERのようです。なぜユージンはミノルタ(現コニカミノルタ)のカメラを選んだのでしょうか。

会社名は「ミノルタカメラ株式会社」でしたからそのままの刻印ですね。のちのSR101とかでは省略されちゃいます。飾りの刻印としては悪くないと思うのですが。

これはいくつか説があるようですが、ひとつには、日本での取材時に新幹線の中でライカなど撮影機材一式の入ったカバンを盗まれ、困っていたユージンにミノルタが手を差し伸べ、機材を提供したこという話がありました。これは都市伝説化していますが、締め切りまでにウラが取れませんでした。

ところが今回、あらためて石川さんにお話を伺ったら、当初、ユージンはサポートをお願いした日本のあるカメラメーカーに断られ、その話を聞いたミノルタがユージンの希望を引き取り、サポートしたのではないかということです。

ユージンが過去、仕事先やLIFEなどの媒体と色々なトラブルを抱えていたことが問題となったのでしょうか。正確な理由はわかりませんが、いずれにしろ協力した当時のミノルタはさすがです。

映画「MINAMATA」にもミノルタSR-T101かSR-T SUPERと思われるカメラが頻繁に出てきます。SR-T101の発売は1966年、改良型のSR-T SUPERの発売は1973年で、ユージンの水俣滞在と同時期に現役バリバリですね。

ただ、SR-T101かSR-T SUPERは、価格帯からみてプロ用機とは言い難いところがあります。モータードライブの装着も最初から考えられていません。モータードライブ=報道用と考えてしまう方が偏見かもしれませんが、ミノルタSRシリーズで唯一モータードライブが使えるのは、モータードライブ一体型のSR-Mのみで、登場は1970年でしたから、ユージンが使用していてもおかしくはありません。けれど石川さんの話ではユージンはSR-Mは選んではいませんでした。重たいからというのがその理由らしいですが、一枚一枚大事に撮影したかったのでしょうか。そういえば1973年にはミノルタの初のフラッグシップ機X-1も出ています。絞り優先AEを採用しているので便利そうですが、これもユージンが使用した形跡はなさそうです。