喪失をどう乗り越えるか。フェーズ4の主題を体現したような、最も「喪失」に対して誠実に向き合った、丁寧な映画だなと感じた。
きっと、突然のチャドウィックの死と向き合わなければいけなかった監督や制作陣だからこそ、この映画が生まれたのだなと。

大切な人の突然の死に対しての乗り越え方に正解などなく、ひたすら自問自答を繰り返し、『Why』を繰り返し続けるだけ。シュリは母親から乗り越え方を教わるも、自分にはできないと否定し、復讐に燃える。幼いながら家族を次々と失ったにも関わらず、一貫して人の言葉や伝統や文化、宗教的価値観に影響されずに、自分で向き合い考え、答えを探し続けるシュリの姿が本当にかっこよかった。

どうしても人は、大切な人を失うとその喪失感のために、その死に、喪失感に、理由をつけたがる生き物だと思う。
そうして導き出した答えは特に傍から見れば滑稽で誤りに思える時もある。正解は無い。
ただ伝統や文化、宗教、そして周りの人の価値観の中でも、自分で考え答えを見つけ出そうと足掻いている姿。そして、それがきっとあの戦いの結果であったと思うし、研究への没頭であったんだなと思うと、本当にシュリが愛おしいです。

ティ・チャラ王のブラックパンサーの高貴な精神性が際立ちながらも、心が揺れ動かされる出来事の連続の中で、試行錯誤しながら自分の中で答えを見つけていこうと努力する、新時代を率いていく新たなヒーローとしてのシュリのオリジンをしっかりと描いていてとても良かった。

作中で何度も繰り返し用いられた、「燃やす」というイメージは何を指すのだろう。ここだけ答えが出ず気になります。