人の死や大病・身体的障害を感動のトリガーやアイデンティティにするストーリーが基本的に苦手でいつも構えしまう…ただ、それを差し引いても乗れなかった

王族たるブラックパンサーで国対国の戦いを描くなら、両国市民の描写が物足りない。とりわけ敵国側は生活感や感情描写が皆無。せっかくの水中都市も造形的魅力、センスオブワンダーが一切無い。

シュリのブラックパンサーは…
スーパーヒーローとしてのアクション的な魅力は前作から大幅に減退。ワンピース空島編のインパクトダイアル的(衝撃の吸収と発散が自在)な性質を持つヴィブラニウムスーツを活かしたアイディア溢れる攻撃はなく単調で退屈。前作から使っていた両腕からの衝撃波は、シャンチーと被りそう。兄にはない彼女の色であるはずのエンジニア力ですら、アイアンハートを登場させたことで個性が埋没。

キャラクター性は兄の死を抱える辛さを差し引いても自己中心的で、気高い精神性が魅力だった前ブラックパンサーからの継承を最後まで感じることができない…ヴィランのネイモアが一定の騎士道的精神や相手へのリスペクトがあるのに対して、彼女は油断した相手の背後から爆破攻撃!?で「ワカンダフォーエバー」…絶句。

スポーティなシルエットだけは、文句無しにこれまでのアメコミ映画史上いちばんクールな女性ヒーローだと感じた。

前作から引き継いで音楽や美術はとても良かったのと、人間臭くてチャーミングなキャラになっていたオコエは白眉でした。