監督らしい "気まずい" の先は、"人は皆 平等"…?"悲しみの三角形" = 眉間にシワが寄る。『フレンチアルプスで起きたこと』など以前の素晴らしい作品群と比べるとアメリカ的になったとでも言うか、些か直接的すぎる部分があって、機知に富むシニカルさが身を潜めてはいる。説教臭いけど、相変わらず監督らしいユーモアと毒があって、人間の醜さを可笑しさに変えてみせていた。彼のフィルモグラフィーにおいてベストな作品ではないだろうけど十分楽しめる。
例えば男女での支払い、あるいはモデルや船長という仕事(役職)。当然のようにそうあるべきだと期待される未だに根強い先入観イメージ = ジェンダーロール(性役割)みたいなもの。階級差含め女性の社会進出に、何やっているのかよく分からないインフルエンサーという仕事に象徴されるSNS(中毒)など痛烈な社会批判。

最初から掴みはバッチリ!男性モデルのギャラは女性モデルの1/3。ハリス・ディキンソン演じるカールとヤヤ。あれだけハッキリと言われて、なおあれだけ好きと言えるカールもスゴい。モデル兼インフルエンサー(?)のヤヤがかなりの曲者なのだけど、彼女が言っている理論にも納得できる部分があって、だからこそ最後の部分にも意味があるのかなと思った。
怒れる"クソ社会主義者"ウディ・ハレルソン = 監督!一人の乗客の顔色窺って乗務員たちがコック含む全員出払ってウォータースライダーしたり(しかもそれがロシア人というのがプーチンに…)、大酒飲みな船長の気分でしかない一存でよりによって最悪な日にキャプテンズ・ディナーをセッティングしたりなど、いくらなんでも現実ではありえないことが地獄絵図まっしぐらな"最悪の一夜"の引き金となる…。ドス茶色い汚物ポセイドン・アドベンチャー!!
この世はサバイバル!作品中盤以降、後半パートだけにスポットを当てたミスリード予告は主人公すら差し替えてしまうよう。あの島での生活は掃除婦だけでなく、カールにとっても案外心地よいものであったに違いない。だからこそあのダッシュ…!!

勝手に関連作品『ザ・メニュー』『ファイト・クラブ』