テレビはシャープ、冷蔵庫もシャープで、洗濯機は日立、電子レンジが東芝で、
食器洗浄機はパナソニック。10年ほど前に買いそろえたわが家の家電ラインナップです。

私たち日本人にとって馴染みあるこれらの家電メーカーですが、
実はいまやほとんど「家電メーカー」ではないことをご存知ですか。
たとえば、日立製作所は今やIoT基盤を軸とした社会インフラの会社です。
ソニーだってかつての稼ぎ頭だったオーディオやテレビの売上高は、全社の1/4程度に過ぎず、
それよりも映画などのコンテンツと半導体が屋台骨です。

業界全体が軒並み赤字となったリーマンショックから10余年、各社はその間
「脱家電」への道を模索し続けてきました。その裏には、大量のリストラがあったことも事実です。

三洋電機のように会社自体がなくなってしまった例もあります。
数十年前に有名大手メーカーに就職し、これで安泰とばかりに意気揚々と
社会人人生を歩み始めた人たちも、まさかこんな状況になるとは思ってもみなかったはずです。

今回のコロナで、各社とも「脱家電」の流れはいよいよ決定的となるでしょう。
日本から家電を作って売るメーカーがなくなってしまうかもしれません。
それは遠い先の話ではないはずです。わが家の家電を次に買い替えるタイミングには、
選択肢が、ガラリと変わっている可能性もあるのです。

とはいえ、まだまだ私たちの生活を支える家電業界。
iPhoneや中国製が台頭し日本メーカーの影はすっかり薄くなってしまった
スマホも、カメラに使われているセンサーはほとんどがソニー製。
鉄道に乗ればそこには東芝や日立、三菱電機のシステムが使われています。

この特集では、直面するコロナ禍に各社がどう立ち向かうのかを徹底的に分析しました。
そして各社はどのような会社を目指しているのかを考えました。
家電業界の10年後の姿を探るヒントをご提供できればと思います。

東洋経済記者。名古屋市出身、新聞社勤務を経て
2018年10月に東洋経済新報社入社。半導体、電子部品などを担当。