このことは、以前に少し触れましたが、公職にあるもの(政治家等)のスキャンダルを事実を摘示して名誉を毀損した場合に、その事実が真実ならば公益性があり違法性が阻却され、真実でなければ違法性が阻却されれないという、名誉毀損罪の公益性に基づいた違法性阻却がよく知られています。
判例もあるし、名誉毀損といえばこれと言うくらい叩き込まれる違法性阻却事由です。
で、一般人だと「虚名(虚飾された名誉)」も保護法益だというふうに習ってきたと思いますが、それだと前に書いたとおり、ネット上の評価も名誉毀損罪の構成要件を充たすことになります。アマゾンやヤフオクの評価で事実を摘示して政治家でない一般人に悪い評価をネット上でつけたら、評価者は全員が名誉毀損罪で有罪になります。
一般人なら虚名も保護されるのだから、違法性は阻却されれないというのは、時代遅れの論理でしょう。
名誉毀損罪に公益性の違法性阻却事由が認められるのは、名誉の保護と言論・表現の自由のバランスをとることが目的です。
そもそも言論・表現の自由とは、間違っていることを間違っていると主張し、自分や他の人を誤らせないための自由です。
ネット上で評価した程度で有罪になるならば、自由の侵害の法が問題となります。
つまり、ネット発達以前の学説判例は、ネット時代に対応できていないことになります。
さて、それではネット時代はどのように名誉の保護と言論・表現の自由とのバランスをとるべきなのでしょうか。