どんなにマスコミが殺到するような時でも、基本的に先頭には誰も立たせず、堂々と先陣を切る
藤圭子という人はそういう人だった
やましいことがないから、圭子さんは若いころからちゃんと記者会見を開いていた
藤圭子の記者会見が好きだったという著名人がいたね
自分も圭子の真剣な顔で迫真にせまるときの顔が好きだった
可憐なのに、りりしくて、移動の際も、圭子さんよりもはるかに大きい男の記者に
大勢囲まれても、堂々、前を見て答えている

テレビ、8時だよ全員集合!のリハーサル中、石坂まさをと大声での口論も目撃されている
中学時代から圭子は口げんかで負けたことないという

野を駆ける犬のような圭子は、強い男と対等に口論することをいとわなかった
だが逆に自分に甘えて寄ってくるネコ男には、よしよしと許してしまった
ダメだと分かればすぐ別れているよね、圭子もそこまで馬鹿じゃないから
ところがプロ中のプロのヒモの言葉にだまされた
NYの沢木と結婚する、駆け落ちの約束になっていた、しかし妻子あり
作家としても成功しており、全て捨ててNYには行けなかった
別れ方がまずかった
あと一年待てとか余裕持ったウソならば、テルに引っかからなかった
圭子はNYで天地がひっくり返るほど気が動転してしまった
傷は深かった、傷心の圭子に隙ができてしまった

一番好きだったのは、もちろんテルじゃなく、前川でも沢木でもなく澤乃井だったと思う
石坂はちびっこだから恋愛感情とは違う、見た目じゃなく、因縁というか、もっと深いところで
圭子は石坂に切っても切れないものを感じていたと思う、だから偲ぶ会の前日に・・・
圭子のマキシムが壊れて行くのは、石坂たちと離れてから
アメリカ留学後は自分で汚してしまう、この時期のメンタルがまず解けない
澤乃井と阿部純子の宿命関係は、良くも悪くも圭子を保証していたのではないか
そこから巣立った時、圭子は自己コントロールできなくなった
石坂の元を去ったあとは、新栄プロだ、そしてその新栄プロで組織人として上手く振舞えない
社長・西川の威光を受けられなくなってから、圭子の転落が始まった
旅芸人の娘がテレビに出られるには、それだけ入れ上げるバックがなければ不可能なこと
当時ナベプロが持っていた交渉力・資本力など全くない素人同然の石坂が、曲がりなりにも
独自の発想と営業力で突破したことに一目置きたい、石坂が圭子を信じていた証左であり
「命預けた」結果である
石坂と圭子が結び合わされたものは、日本戦後庶民史の臨界に位置している、偲ぶ会の前日
全く無縁のこととは、思われない、宿縁を感じてならない