魯山人も魅了した金沢の料亭

和食の本場といえる京都をはじめ、県外からわざわざ修行に来る人もいるほど、金沢の料亭の高いレベルは広く知られている。

美食家・芸術家として著名な北大路魯山人も、金沢の料亭に魅了された一人。彼は32歳のころ金沢の商家に食客として招かれており、その際に商家の主人に金沢の料亭に連れていかれたという。
料亭の料理やその空間に衝撃を受けた魯山人は足しげく通い、主人から料理の味付けや盛り付け、器との調和、客のもてなしなどを学んだといわれている。

美食家としての魯山人のルーツは金沢の料亭にあるといってもよいだろう。

伝統工芸品を使って料理を供する
http://gokan-gochisou-kanazawa.jp/wp-content/uploads/2015/02/ryotei_02-300x200.jpg
料亭の器には、地場の伝統工芸である九谷焼や輪島塗、金沢漆器、山中漆器などが欠かせない。歴史ある料亭では、歴代の当主らが買い集めた器の数々を保管し、今では貴重となった名品も惜しげもなく料理に使う。

さらに、鯛の唐蒸しは九谷の大皿に、治部は漆塗りの「治部椀」という専用の器に盛る、というように器へのこだわりは大きい。これらの料理以外の盛り付けは料理人の裁量に任せられることが多く、料理が最も引き立つような器が選ばれる。
料亭の料理はその器との一体感も楽しんでほしい。

建物も見どころが多い。芸妓(げいぎ)の立ち振る舞いを鮮やかに見せるとされるべんがら色の壁が今も残る。そしてより特徴的といえるのが、武士が好んだ金沢独自の群青(ぐんじょう)色の壁。料亭によっては群青壁があるので、ぜひその鮮やかな空間に足を運んでほしい。

見事な欄間、季節や行事によって替える調度品、掛け軸など、あらゆる面で気配りが徹底されている。こういった空間をつくり出し維持し、演出するのも料亭の特徴といえる。

充実のもてなしを体験

料亭は分業体制をとっており、客は充実したもてなしを受けることができる。料理長をはじめとした料理人たち、客をもてなす仲居、そして出迎える玄関番まで。
料理を出す最適なタイミング、夏場の打ち水、庭の草木の手入れ…数えあげればきりがないが、そういった細かい配慮を随所にうかがうことができるだろう。

さらに、料亭では芸妓たちを呼ぶこともできる。お囃子などの一流の芸を目の前で見られるのは、料亭の紹介があるからといえる。
かつて料亭は上流階級の人たちの社交場でもあり、もてなしの作法はここで学んだという人も少なくない。

現在の料亭は誰でも入りやすく

料亭は敷居が高い場所と思われがちで、実際かつては紹介がないと入れない、上流階級専門の場所だったのがほとんど。しかし近年はそういったこともなく、誰でも入りやすくなっている。

特に料亭が力を入れているのが婚礼で、披露宴に活用される店が数多くあり、若い人たちも利用している。若い世代も金沢の文化である料亭を大切に思い憧れている証拠といえるかもしれない。

そして婚礼に限らず、誰でも料亭を訪れることができる。ただし料理の仕込みがあるので予約は必須。そして一部の料亭は宿泊も可能だ。

そして近年ではお手軽なランチコースも用意、地元の人はもちろん観光客も入りやすく、昔に比べて格段に敷居が下がったといえる。