「日本から非正規という言葉をなくしたい」と再三、言明している。
そのような雇用環境を作り出せれば、確かに望ましいだろう。ただし問題は、現実の世界では、そのような雇用形態を維持することが困難になっていることだ。
その背景には、新興国の工業化やITの進展など、世界経済の変化と、その中での日本経済の地位の変化がある。また、人口の年齢構成の変化も、「日本型雇用システム」の維持を困難にしている。
このように、新しい働き方を実現するには、規制を緩和して新しい産業を成長させることが必要だ。
雇用政策とは産業政策であり、産業政策とは規制緩和であると考えざるをえない。
経済活動のかなりのものが市場を通じて取引されるのではなく企業の内部で行なわれるのは、調整費用が存在するためであると論じた。このため、企業はさまざまな活動を内部に取り込み、巨大化することによって効率化を進めてきたのである。
しかし、その基本的な条件が、いま変わろうとしている。
必要とされるのは、新しい分野の専門的サービスだから、これまでの社内の人材では対応できない場合も多い。
他方で、クラウドソーシング(インターネットで仕事を委託するアウトソーシングの手法)の仲介サービスが発展して、必要とされる専門的サービスに対する需要と供給をマッチさせることが容易になっている。